スバルと言えばスバル360を思い浮かべる世代の人少なくなかろう。「てんとう虫」の愛称で親しまれ、自動車が高嶺の花だった日本の自動車黎明期に多くの家庭でマイカーを実現するのに大き~~な役割を果たした名車である。実際私の親や親戚もこの車に乗っていた。
この頃のスバルは、P-1、スバル360、スバル1000など名車と呼ばれる車を手がけており、現在の「技術のスバル」にふさわしいように思える。だが、レガシィやインプレッサと比較すると違和感を覚える。P-1は直4エンジンのFR、スバル360はRR、スバル1000は水平対抗エンジンだがFFと、スバル~~の特徴と成っているエンジン形式、駆動方式が必ずしも当時から継続していたものでないのに気づく。
では現在に至る転換は、いつどういう形で実践されたのだろう?
本書は、この疑問を歴代のスバルの技術者たちへのインタビューを交えて解いていこうという試みだ。その中でスバルが単純な技術主導で現在に至った訳ではなく、強烈なクルマの理想の構想と~~それを現実化しようという技術者の情熱が現在のスバルを作っていったと行ってもよい。そして、多くの技術者が口にする伝説の技術者、百瀬晋六氏。彼の思想と情念がスバルを単に技術指向の企業の企業にとどめず、スバリストと呼ばれるシンパのユーザーを形作るまでに魅力的なメーカーとしているのがよくわかる。
日本のモータリゼーションの黎明期の雰囲気~~がよく伝えられている良書~