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三条天皇―心にもあらでうき世に長らへば (ミネルヴァ日本評伝選)

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: ミネルヴァ書房
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歴史の後知恵を払拭して三条天皇の時代を眺める ★★★★★
吉川弘文館の「一条天皇」の発刊が2003年、7年を経てミネルヴァ書房から「三条天皇」が発売されました。
出版社は異なりますが、事実上、「一条天皇」→「三条天皇」は「続きもの」と考えて良いかと思います。

倉本先生自身の突っ込みが満載のこの本、堅苦しくない内容で、
「ある程度の基礎知識のある平安オタク向け本」と読者層を設定しているように思います。

「三条天皇」という人物そのものについて語った本は本書が初めてで(論文はありますが)、
期待通りの楽しい一冊となっています。

「道長との対決には結局負けた」という「漠然としたイメージ」のある三条ですが、
三条天皇の事績、実際にあった事象、三条を取り巻く人々の「立ち位置」を丁寧になぞり、
解釈を加え示す事で、その「漠然としたもの」を本書では払拭してくれています。

三条、道長、彰子、実資その他の公卿たち、多くの人物が登場しますが、
誰かをものすごい賢人として持ち上げるでもなく讃えるでもなく、ごくニュートラルな書きぶりで、
「完璧な人格者」なんていないからこそあの時代のあの流れがある、という事がよくわかる構成になっています。

基本、三条天皇は「空気を読んでいない」部分も多く、道長との関係悪化のトドメになったのは、
やはり「(女成)子立后」の強引さにあった、という事でしょう。

道長が一方的に三条との距離を取った、という事ではなく、公卿界の総意として「三条天皇はちょっと…」、
という意識があった、という点は本書全体を通して語られている事で、これは大事な理解だと思います。

後代視点を払拭し、その時点での三条の視点、気持ちで眺めてみれば、
確かに、「敦明親王の立太子」を成し遂げた三条が、将来において己の血統が続く事を信じ、
それなりの満足感を得て亡くなった可能性も考えられるわけです。
本書最後に記される倉本先生の「まとめの言葉」には深く感じるものがありました。

2800円+税は妥当な価格と思います。
著者近影では倉本先生のコスプレも見ることができます(笑)。