「フランツ・カフカ」論の冒頭、「ポチョムキン」の章。
宰相官邸の薄暗い控えの間、奥の寝室に閉じこもったままの周期的鬱病の宰相ポチョムキン、彼から決裁を貰えず右往左往する高官達。
この膠着的場面に現れた下っぱ役人のシュブァルキン。彼の横断的行動は、固く閉ざされた扉を抜け、奥の間から決裁を持ち帰ることに成功するが、その書類には、すべてシュバァルキンと記されていたのだ。
幻か、嘘か、真実か。この眩暈のような物語は、ベンヤミンが言うように、カフカの作品より200年先立って駆けていくのだろう。
ぼく!は瞬時に、歴史的寓話のように汲み上げられたカフカの世界に連れ去られてしまったのだ。
これが「新しい天使」との最初の出逢いだった。