文庫「テンペスト」を読んでからお楽しみください
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2年前、小さな小さな島国に過ぎない黄昏の琉球王国を舞台に、とてつもなくダイナミックに、しかも終劇までジェットコースターのように飽きさせることなく、歴史に翻弄された人々が描かれた「テンペスト」にすっかり酔わされてしまいました。
本作はその外伝という位置づけですが、「テンペスト」が王宮である首里城が話しの中心だったのに対して、今回は庶民の街那覇が主人公たちの活躍の場となっています。
首里と那覇は隣り合わせの地域なのに文化が全く違う。従って、物語も市井の人々の、とはいえちょっと変わった人々ばかりですが、毎回ほろっとさせる人情話で構成されています。
1話に一人以上「テンペスト」の登場人物が出てくるのも楽しみの一つ。本当に作者は読者の楽しむツボを心得ていて、若いのに才能を感じさせます。
琉球王国モノ第2弾。テンペストとはまた違う味わいのある作品
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2年前の『テンペスト』は琉球王国を舞台にした、スペクタクルな大長編で読んでいてハラハラドキドキさせてもらった。彼の作品の中でも最も好きな作品だ。
今回の作品は、前作と同時代の琉球王国を舞台にして、筑佐事という当時の岡っ引きみたいな職についた青年を主人公にした連作モノ。前作のような血沸き肉踊るって感じはしないけど、むしろ琉球の市井の人々の生活を、人情味豊かに描いた心に残る作品だ。
前作『テンペスト』の登場人物も登場するので、ファンにはうれしいところだけど、あくまでも控え目。物語の中心は、主人公の武太と彼を取り巻く人々。前作の琉球王国の絢爛豪華はないけど、王朝の華やかさとは裏腹に、困窮する民たちへの著者の視線はとても温かい。読後感がとてもいい作品だ。
ぜひ、続編を出して欲しい。