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バガージマヌパナス―わが島のはなし (文春文庫)

価格: ¥590
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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しんみり… ★★★★★
読み進んでいくうちに、どんどん引き込まれていきました。
最後まで一気読みで。

読み終えて自分のことを考え、家族のことを思い、これからも大事にしたいものに思いをはせて、
温かい気持ちになりました。



心がほどける南のファンタジー ★★★★★
 これは、沖縄のゆったりまったりとした空気の中で、主人公の綾乃という少女が成長していく物語です。といっても、主人公が成長していくビルディング小説ではあるのだけれど、そこには一片の堅苦しさもなく、綾乃の友人で90前のおばあちゃんのオージャガンマーとの無茶苦茶なやり取りや、島一番の巫女であるガニメカとの戦い、神様相手にさえ平然と嘘をついたり文句を垂れる綾乃たちを見ていると、とにかく楽しくてリラックスできて笑えるお話で、ひさびさに南方の緩やかさを満喫できた一冊で大満足な一冊です。
 ちらりと書きましたが、この物語の中では、沖縄のもつ伝統的な宗教観や、スーパーナチュラルな世界が普通に当たり前の大前提で出て来ます。それは、作中でも語られているように、本土の人間たちとはかなり違う世界観であり価値観ではあるのですが、それの緩さや奥深いところの自然回帰や先祖崇拝の部分はなかなかに癒されるもので、こういう素朴さやおおらかさも大事だよなぁと共感いたします。 
 これは、この文庫版の解説で「ファンタジーといえば、トールキンにせよナルニアにせよ、北方の真面目に働くファンタジーが普通思い浮かべられるけれども、それだけではないことに驚く」という言葉にも繋がってきます。確かに一般的なファンタジーでは強い敵や脅威があってそれに対抗するために山に登ったり、辛い旅をしたりというのが定番ですが、こういう緩いファンタジーもとてもありだなと思います。
 特に世の中がこうも不景気なおりには、南の緩やかさや身体がほどけるような感覚がとても心地よいものです。
 
 蛇足ながら同じ作者で「風車祭り」というおなじ沖縄を舞台にした焼き直し的な作品があります。そちらは700ページ超の大作ですが、この本以上によりファンタジックでマジックリアリズム的な語りの不思議さがあり、終わるのがもったいなくなるような魅惑的な一冊です。
活力が得られた ★★★★★
コザ出身で東京在住の私には、とにかく面白い。狭い島とゆったり流れる時間という素材からここまで展開させられる驚き。読み手に媚びない方言の多用。ルールや常識から逸脱した概念の心地良さ。ノーテンキな内容からは予測出来ない涙の結末と爽やかな締め。オキナワンジョーク。散りばめられる沖縄史と観光地として押し付けを感じさせない自然の描写と琉球古典音楽。読者の頭によぎるのは家族や親戚、またはご先祖様に対する感謝ではないか、ちっぽけでもそれぞれの価値観の中で目標を持ち精一杯に生き抜く強さが胸を打つ。出身地を愛する人は多かれど、これだけバランスを持った完成度の高い作品を世に送り出していける池上さんを応援しています。
なんて綺麗に ★★★★☆
綾乃のとにかくテキトーな性格が面白い。
いまだかつてこんなに自堕落で、口が悪くて、純粋なヒロインをみたことがない。
それに加えてテキトーの大先輩オージャーガンマー。こんな二人で話が成り立つのかと思わせて最後の1/3で綺麗にまとめてしまう池上がすごい。
拝みの本質、オージャーガンマーの幸せ。煤にまみれて誰にも気づかれなかった宝石がゆっくりと輝いてくるのを見届けられてとてもあたたかい気持ちになれました。

#考えるのが面倒になって眠ってしまった綾乃を扇風機がやれやれという描写がとても好き。
破天荒なヒロイン ★★★★★
一読して夢中になりました。

まずは破天荒な性格のヒロインです。ワガママでやりたい放題、傍若無人という言葉がぴったりの主人公がわが道を行きます。彼女の日々を綴ったシーンが本作の大半を占めていて、彼女と彼女に関わる人々との交流シーンが淡々とした文章で、かつ魅力的に続きます。

彼女と島の女たちの交流は生き生きしていて、淡々としつつもぎょっとするようなことを言っていたり、あきれるような応酬が交わされたりします。
そのやりとりに引き込まれているうちに、ストーリーが進行し、最後で爆発する、という構成です。

難点は、キャラクターに魅力を感じられないと、楽しめないかもしれない、というところです。前述したように、日常を綴っているうちに、最後で話がまとまる、と言う構成なので、キャラクターに引き込まれていないと前半が苦痛かもしれません。
なにしろ主人公が半端でなく破天荒なので、引く人は引くかと思います。いわゆるいい子ちゃんではなく、欠点だらけの人間、というタイプなので。

個人的には、非常に楽しめました。夏の南の島と、そこに生きる主人公たちが、鮮やかに文章から浮かび上がって来ます。最後は何度読んでも涙ぐんでしまいます。