エヴァンスと完全決別したフリードマン
★★★★☆
本作品のプロデューサーが解説する試聴会で本タイトル曲を大音量で聴いて、非常に良かったので購入したが、自宅で小音量でSACD盤を聞いたら、その感動が無かった。
DSD録音で音質は文句無しで全体に綺麗な演奏なのだが、何か唸るような盛り上りに欠ける感じがした。それがないジャズは面白くない。3曲目からはBGM的に聞いてしまった。星3.5が正直なところ。
亡きビルエヴァンスを求めて、若いころエヴァンスの作風に似ていたフリードマンを聞いている人は少なくないかも知れないが、もう自分はそろそろそういう聞き方を卒業しようと思う。エヴァンス風に聞こえなくなって久しい、老いたフリードマンにエヴァンスを求めても所詮無理だからである。(ブルーベックも80年代に入って、無骨なピアノでなくなったように)
これまでのフリードマン作品はエヴァンスの思い出に浸りたいファン層を狙って、必ずエヴァンスを思い出させる曲が挿入されていたが、今回は皆無である。その意味では、サークルワルツから40年を経過して初めてエヴァンスから完全独立した記念すべき作品である。
ところで岩浪洋三という他の宗派にはこだわらないのに、ユダヤ系であることに執拗にこだわる評論家が、しきりにフリードマンがユダヤ系であることをライナーノートに書いている。
また懲りもせずに、何の根拠あってかエヴァンスがユダヤ系であることも繰り返している。父親がプロテスタント、母親がロシア系ギリシャ正教徒だったエヴァンスがユダヤ系であるはずがないんだけど。もっともユダヤ人の奥さんと結婚して改宗すれば別だけど(そんな話も聞かない)それではユダヤ人家庭に育ったのとは異なる。岩浪さんのジャズユダヤ論はそろそろ止めにしてほしいんだけど。