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なにもかも小林秀雄に教わった (文春新書)

価格: ¥788
カテゴリ: 新書
ブランド: 文藝春秋
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面白いことは面白いのだが、ちょっと散漫ではないか ★★★★☆
 「反哲学入門」に驚嘆したことで、本書を手に取った。感想は三点だ。

 一点目。著者も認めているが、著者は「なにもかも小林秀雄に教わった」わけではないことが良く分かった。敢えていうなら。本書で取り上げる様々な哲学者や文学者を小林秀雄に結び付けようとしている部分はあるが、例えばハイデガーのことは、やはりハイデガーに教わっているわけで、小林秀雄から教わったわけではない。

 二点目。本書は一種の自伝として読める。木田という方の青年期の生活が窺えて楽しかった。テキヤをやったり闇米商売をやっていたという哲学者らしからぬ経歴で有名だと聞いていたが、今回その実態が分かって面白かった。勿論、ご本人の自己申告による「実態」であるので、どこまで正確なのかは分からないし、偽悪的に書いている可能性も排除出来ない。僕らも上手に騙されているのかもしれない。


 三点目。ということで、本書は読み易いが、散漫なそしりは免れないだろう。勿論、散漫が全ていけないというものではあるまい。但し「反哲学入門」という、余りに切れ味が鋭い著書を読んだばかりの僕としては、幾分、拍子抜けしたことは確かだ。著者の本は更に読まねばならない。
3か月で外国語を習得する人 ★★★☆☆
木田先生は最初メルロ=ポンティの訳者として知られていた。先生がハイデガーを読むために(旧制の)東北大に入った時は英語しかできなかった由である。同級生がすでに第2外国語を習得しているので先生の採った方法が1日13時間3ヶ月ぶっ続けに勉強するというもの。これで独仏の近代語は2ヶ月、ラテン語、ギリシャ語も3ヶ月でマスター。大学院の1年で5ヶ国語が読めたそうな。欧文(特に哲学)では原文の構造を極力維持したまま日本語に置き換えようとすればすんなり読めなくて当たり前だが、先生の訳文はカッシラーでもフッサールでも読めばとにかく分かる。木田少年が保田與重郎の影響を受けなかったという事は論証抜きの、つまり真偽不明の言説には最初から拒否感があったからではないか。
今さら小林秀雄でもあるまい ★★★☆☆
著者もよく言われるそうだが、私もそう思う。

なんだか、凄いことが書いてあって、小林秀雄のことを見直すとか言うハメになったら、それはそれで、なんだかちょっとショックだなと思いながら読んだのだが、もちろん、全然、そんなことはないのであった。

私は特に著者に対しても関心がないので、この点数になりました。
早々とツンドク ★☆☆☆☆
書名は『なにもかも小林秀雄に教わった』なのだが、著者自身の読書遍歴が延々と続き、早々とツンドク本になった。読者は小林秀雄に興味があるのであって、著者自身の読書回想に興味があるわけではない。まあ、新書本なので我が身の早とちりにもたいして後悔はしないが。
闇屋の哲学者の来歴 ★★★☆☆
近年の木田元の専売特許となった回顧物の一冊ということで、先行する著作と概ね同工異曲。
とはいえ、本書の美点は今更ながらに小林秀雄を看板に持ってきて、ドストエフスキーやモーツァルトを語るところにある。

亀山郁夫訳の『カラマーゾフ』ブームで若い世代にもドストエフスキーは改めて知られることになっただろうが、ベートーヴェンを本当に聴くきっかけになったのがドストエフスキーの小説作品のなかであるという評者の体験からすると、名前を知っていることと本当に知ることとの間には大いなる懸隔があるのであって、本書を通じてそのものに就くことになれば悦ばしい。小林秀雄もドストエフスキーもそして本書の木田もそのような開かれた書物を書いているところに大きな魅力があるのだろう。

そういえば、亀山訳ドストエフスキーは、初めて「小林秀雄とは切れた」ドストエフスキーという感じがしないでもない。

そういえば、モーツァルトを本当に聴くようになったのは、本書中にも書いている「走る哀しさ」と「死の傑作」(アンリ・ゲオン)という小林の引いていた言葉からであった。この小林的なモーツァルト理解は、短調偏重であって、オペラなど長調のモーツァルトの素晴らしさを見誤らせる結果になったともいえようが(『レクイエム』が一番好きというのは日本人くらいらしい)。それくらい小林の影響力は大きかったわけであり、彼以降も吉本隆明、柄谷行人と続く文芸評論家の文章が大学人も含めたニッポンインテリに及ぼしてきた影響を考え合わせれば、アカデミズムの力は弱かったとも言える。

木田元はあくまでアカデミズムの人だが、その人にして小林秀雄なのであった。ニッポン文化の一つの特色がここにあるのかもしれない。