愉快痛快人情劇です
★★★★★
「どぶどろ」も名作だが、本書もすこぶる読後感の良い作品。市井に生きる人々を描いた時代小説は数多いが、この作品は、幼くして貧しい寒村から江戸へ出てきた2人の少年、市造と辰ノ介の人生物語りである。徳川幕府も左前になってきた混乱期、自分達の才覚だけで町年寄りにまで大きくなっていく過程が、丁寧な筆致で綴られ、読者を離さないものがある。帯評にも『最後の長篇』とあるが、個人的には半村作品の中でもベスト3に入れたい。一方の大作、SF巨編『妖星伝』を20年ぶりに読み直そうかという気になりました。安心して読める作家の、楽しいに違い無い作品を読むのって、ホント楽しい。