「雪の結晶は天からの手紙である」(中谷宇吉郎)の宝石版:「ダイヤモンドは地下からの手紙である」
★★★★☆
世の中には色んな宝石があります。天然モノ、合成・人工モノ、そして模造品。それらは如何にして合成されたのか? 天然モノは合成モノと何処がどの様に異なるのか? この新書は、そんな疑問の数々に答えてくれます。
特にダイヤモンドの話は面白いですね。人工ダイヤは如何にして合成されたか? そして色んな形状の天然ダイヤはどういう仕組みで出来るのか? そのヒントは実はダイヤモンド結晶自身に隠されているのです。その謎解きの様子は、雪の結晶の形を良く観察すると【中谷ダイヤグラム】の観点でその雪結晶の成長条件(温度と過飽和度の履歴)が推測できるという話と全く同様なのです。「結晶成長の知識を使うと、天然ダイヤが出来るまでの"実況中継"がここまで詳細に出来るんだ」と感心しました。
ダイヤモンドの話に限らず、他の宝石に関する蘊蓄(うんちく)も面白く学べます。例えばルビーとサファイヤを分ける要因などについては興味深く読めました。
「結晶は生きている」(黒田 登志雄)などの本で結晶成長の知識を有している読者なら、本書は面白く読めるでしょう。(鉱物に関する一般的知識については「図解サイエンス 鉱物の不思議がわかる本」(松原 聰)などの副読本が手元にあると良いかもしれません) 特に坩堝に原料を仕込んで電気炉で焼いたことがある人なら尚更面白くよめます。自分で焼いた結晶試料は、その出来栄えの良し悪しによらず「これは坩堝からの手紙である」という謎解き気分で観察することが出来そうですょ。(^-^)