翻訳本が存在していることに感謝
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最近、初めての妊娠で5ヶ月にして流産してしまったため、それをきっかけに手にした本です。
表紙の雰囲気を見て、勝手にお医者さんが書いた本だと思い込んでいましたが、綿密な取材と論文などの資料の読み込みを経てこの本を完成させたのは、アメリカ人のジャーナリスト。それも自分の妻が連続して流産を繰り返している人でした。
自分が流産している女性の夫である立場ならではの熱心さと、科学ジャーナリストという能力が存分に結集されてできた本であり、これと同じような本を他の人が出版するのは大変難しいのではないでしょうか。流産した当事者である著者の妻も取材協力しています。
一般向けの流産の本というと、医学的な説明のものでも余りありませんし、その他もどうにか流産・死産経験者の体験談・心境が主なものがあるだけで、この本のように反復流産を抱えた人に役立ち、かつ力を与えてくれる本はなかなかないと思います。
取り上げられている事例は、著者が英語圏の人であることからアメリカ、イギリス中心ですが、反復流産を繰り返している人々に施されている数々の治療が、どのような経緯で開発され、どれだけ実証がされていないままなされているか、ということが書かれています。私自身は不妊・不育治療を受けているわけではないのでそれぞれの事例を直接自分に照らし合わせて考えることはありませんが、これらの多くの治療方法の事例を読んで感じるのは、どれも「可能性が低くとも、効き目が科学的にきちんと立証されていなくても、有害な副作用がないのであれば試してみる価値がある」と試さないではいられない夫婦の気持ちです。
そして、私の周りでもたまに聞く話ですが、「何度も不妊治療を試してもだめだったのに、あきらめた後に自然に妊娠した」という人もいるという、人の意のままにはならない生命の姿です。
また、通常われわれが認識する流産は、病院で妊娠したと告げられた後の話ですが、事実としてのごく初期の流産は、われわれが思っているよりもはるかに多いということも知りました。