ぱらぱらとめくれば指定教科書と同様に「近傍」「有界性」「単調性」といった用語や、デデキント、ワイエルシュトラスといった人名はでてくるものの(当然!)、左上から右下に読んでいけそうなやんわりとした雰囲気。「四の五の言わず、とにかくこの薄い本を一冊仕上げれば、『可』にしても単位だけはとれそうだ」と直感し、夏休みの後半、計算用紙と鉛筆を手に1ページから読んで問題を解きました。
ことばでの説明、図表、数式展開、例題、練習問題のいずれもが、これほどの小著(索引まで含めても130ページ未満)にしては潤沢です。難といえば紙幅の都合で練習問題の解答が略解になっていることですが、これとても素材がε-δ論法に限られていますので証明問題が多く、よって例題の解答例を参考にすれば演習上はなんらの支障もありません。
単位取得がやっとであった自分の数学力に心底赤面しますが、直感に誤りはなかったようで期末試験はこの一冊で十分に対処できました。独力で学部一年の一学期解析学試験を切り抜けたことは人生を通じての思い出となり、この本も出会いを忘れられない一冊となって今も愛蔵しています。