戦時中のこと。兵舎で夜、就寝前に兵隊が本を読んでいると「一人で読んでいては勿体ない。皆にも聞こえるように声に出して読んだらどうか。」そこでその兵隊が朗読をはじめました。ざわついていた一室が、次第に静かになり、小説の世界に引き込まれていきました。最後の方になると、そちらこちらですすり泣きが起こりました。鬼軍曹といわれた強者の眼からも泪が流れ落ちていました。
山本周五郎の「水戸梅譜」(新潮文庫「日日平安」)だったそうです。