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イスラームの構造―タウヒード・シャリーア・ウンマ

価格: ¥3,990
カテゴリ: 単行本
ブランド: 書肆心水
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日本社会を相対化する鏡 ★★★★★
知識人は、日本社会を欧米のそれらと対比してのみ分析しようとするある種の病に冒されている。明治維新以降、欧米の文化、文明、科学技術はおろか、自由文芸までも積極的に移植してきた背景があり、大東亜戦争の敗戦をもって覇権国家アメリカの影響下に組み込まれてきた日本にあって、それは必然ともいえる桎梏なのかもしれない。

本書は、そのような退嬰的な思潮のなかにかって、歴然と社会比較の対象をイスラームに求める。タウヒード(世界観と存在論=価値観の根本)、シャリーア(法律・経済=社旗運営)、ウンマ(共同体=ともに生きるかたち)の3極構造からはじまり、それらを3層構造に読み直しつつ精緻な論が展開される。

泰斗井筒俊彦の弟子である著者の論は、井筒が「東洋哲学の根幹に通底する諸神秘思想の共時的構造化」をこころみた大著、『意識と本質―精神的東洋を索めて』の存在論を随所に引きつつ、イスラームの本質を冷静にかつ思弁的に著述してゆく。

その静謐な思弁はp352以降つづられる終章にあっては、強烈な問題意識に根差した議論に集約される。そこでは、黒田は、「旧ソ連崩壊後、覇権国は、共産主義という主要な敵の衰退、消滅に伴って、文明の衝突の相手として戦略的にこの地域(中東イスラーム地域)を選んだ感が強い」(p354)とみたてる覇権国を『同一律の帝国』とさえ呼ぶのを憚らない。

9.11以降、『同一律の帝国』側からイメージが形成されたイスラーム=テロリストといった操作的イメージに無批判的に流される日本人一般に対して著者が抱いているであろう焦燥感が終章の行間にはあふれている。

非婚率の上昇、家庭崩壊、近所づきあいの希薄化、企業共同体の崩壊など、日本社会の小共同体の劣化現象は着々と進んでいる。『同一律の帝国』が推進してきたグローバリズムを無批判的に同調・導入してきた今日の日本の姿を、イスラームという鏡で映し出すとき、より問題の輪郭は鮮明なものとなるのである。

そのような意味合いにおいて、本著は、日本社会を相対化するよき鏡の役割をも果たしていると思われる。
本道 ★★★★★
イスラームを理解するため、その基本構造である「タウヒード(一化の原理)」「シャリーア(イスラーム法)」「ウンマ(共同体)」という3つの要素に絞って詳細に、且つ解りやすく説いている本書は、初学者である私にも大変有用でした。
本書の冒頭部分で言及されている「イスラームが人々を惹き付ける要素は何か?」という素朴かつ根本的な疑問に十分に答えてくれるものであるばかりでなく、私たちのしらないイスラームの構造を解き明かしてくれます。途中、哲学的な部分もありますが、さすが大著と言われるだけあって読み応えがあります。イスラームに興味がある方は一読してみるべきです。