Silver Apples / Contact
価格: ¥718
サンプリングによく使われるエレクトロニック・ポップのパイオニア、シルバー・アップルズは、とてつもない影響力をもった常識はずれの2枚のレコードを1968年と69年にリリースすると、その後姿を消してしまった。シルバー・アップルズはサイケデリック全盛の1967年、ドラマーのダニー・テイラーと原始的なシンセを操るシメオンがニューヨーク・シティで結成したグループ。おもしろいことに、シメオンは自作のシンセをザ・シメオンと名づけた。テイラーはポリフォニーの発電所のような男。どこまでもループしていくテイラーの演奏は、アップルズの実験的な音楽を推進させる原動力だった。アップルズの音楽の特徴といえば、自然音の断片、奇怪なヨーデルのようなハイ・ピッチの歌声、ひょっこり出てくるバンジョー、そして――これがいちばん重要なのだが――何かを叩いているようでもあり、羽音のようでもあり、警報のようでもあるザ・シメオンのサウンドの美しさだ。この2つのアルバムは、前衛的なセンス、ポップなメロディー、フォーク・サイケの構造、凝りに凝った歌詞、重たいパーカッションを奇妙かつ誠実なやり方でミックスしたもの。言葉で説明するのは難しいが、当時最も時代を先取りしていたプログレ予備軍の音楽と並んで高く評価できる、独特な音楽なのだ。アップルズは90年代半ばに再結成されて熱烈に迎えられ、多くのオマージュを捧げられた(スペースメン3、ロウ、ステレオラブがアップルズの名を挙げたり、それ以上の称賛をしたりした)。しかし、よくある話ではあるが、再結成してからの録音にそれほどの意義はない――このCDが1枚あれば充分だ。面倒くさがり屋の電子系ミュージシャンは、このバンドからサンプルのネタをちょうだいするといい。もっとも、もうみんなやっているけれど。(Mike McGonigal, Amazon.com)