非常に面白かった。
★★★★☆
予備校で化学を教えていることもあり,ある程度の知識はあるが,それでも非常に面白かった。高校の教科書程度の知識ならあると思っている人も,意外と知らないことが書かれているのではないだろうか。本全体としては,前半部分はやや冗長な気がしたが,後半に進むにつれ,少し突っ込んだ話も出てきて興味深い。著者の知識の豊富さが感じられる。特に参考になったのは,「6-9 ヘモグロビンと葉緑素」「7-3 青銅・真鍮・砲金」「7-4 三角コーナーに銅を使う理由」「7-7 ナポレオン三世とアルミニウム」「11-2 神経伝達とナトリウムチャネル」など。一例としては,真鍮のことを「黄銅」または「ブラス」と言い,トランペットやサキソフォンなどの金管楽器はこのブラスでできているので,吹奏楽団のことをブラスバンドという話は,なるほどと思った。
それぞれの項目が,かゆいところに手が届くような内容でありながら,しかしマニアックな路線に入らず,浅いところで止めている。それが,メリットでもあり,デメリットでもあるが,読みやすさには貢献している。化学に興味がある高校生が読むのにも最適だろう。