先鋭的で豊潤
★★★★★
吉田美奈子さんの80年代当時のブラックミュージックへの
一つの回答であり、私はこう演っていくという決意が伝わってくる作品だと
思います。
このあと、ブレッカーブラザーズとの共演の「ライトゥン・アップ」や自らの
作品群を清水氏と解体再構築してみせた「インモーション」の2作へとつながる
きっかけになった名作です。
異常なまでにくっきりとした輪郭のブラス、うねりつつも凄みのある切れ味のリズム隊、エモーショナルな声と つきはなすようなクールで低いトーンのラップ。・・・圧倒的です。
光と、闇と。そして“現在”の美奈子さんと。
★★★★★
おすすめです。
以前からインタビュー等で、歳相応でありたい、自分らしく自然体でいたい、
とおっしゃっていた、吉田美奈子さん。
その美奈子さんの現時点での最新オリジナルアルバムとなるのが、この「spangles」です。
以前は自ら作詞・作曲・編曲・そしてミックスダウンまで(!)を手がけていたこともある“スーパーウーマン”の美奈子さん。
今作では、作詞は全部美奈子さんの手によるものですが、
作曲の数曲は人に依頼され、そして基本的にアレンジとしてのサウンドはThe Bandのメンバーでもある倉田信夫さんに全曲委ねられていて、
一聴すると、あの名作「gazer」や「DARK CRYSTAL」、「spell」
とのあまりの肌触りの違いに、驚かれ、
そして美奈子さんは変った、と思ってしまうかもしれません。
確かに、かつて先鋭的で威嚇的で、そして攻撃的ですらあったサウンドと言葉は、
今作では優しく、そして暖かい響きを持った柔らかい肌触りの“体温の感じられる”物へと
変容しています。
しかし、聞き込んで行くと、美奈子さんの音楽は何も変っていない、ということに気づくでしょう。
かつてから美奈子さんの音楽の特徴として挙げられていた、光と闇の対比と、その心象風景。
それらが、ますます磨きを掛けられて作品として昇華されていることに驚くはずです。
闇はより深く、そして、光はよりまぶしく…。
ほの暗い闇から、真の闇まで。
一筋のまぶしい光から、優しくきらめく午後の陽光まで…。
そして、街の喧騒から、夜の静寂まで…。
1曲目から10曲目まで、多様な光とそしてそこから湧き上がってくる風景や情感が、
穏やかだけど、とてもフレッシュにそして感性豊かに展開されます。
それらは間違いなく美奈子さんの音楽としか言いようのない、
深く、そして広がりのある音楽世界です。
今作は間口も広く、リラックスした印象もあって、とっつきやすい感じの内容ですので、
美奈子さんの作品を初めてお聞きになる方、
そして、アルファ時代には聞いていたけど、
後の打ち込みサウンドが苦手で離れてしまった、という方にも、是非聞いて頂きたい一枚です。
(CDとして入手できる形での)一番新しい、そして、現在のすっかりオトナになった美奈子さんを、
“心”で感じられるはずです。
ライブがますます楽しみ
★★★★★
通算19作目のテーマは「歓びの光」だそうです。河合代介氏のハモンド・オルガンをはじめとするTheBandのメンバーに紡ぎ出される音が素晴らしい作品に色彩を添えています。本人による書下ろし曲が5曲と倉田信雄氏が2曲、河合代介氏が1曲、TANATONOTEが1曲、渡辺香津美氏が1曲を提供。鋭くも、やさしさがいっぱいの全10曲。さぁ「購入」をクリック!