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遠い接近 (文春文庫)

価格: ¥750
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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絵画の遠近法を隠喩したストーリー ★★★★★
清張の本を読むなら、もっと清張について知らなければ、真の清張文学の醍醐味は味わえない。今までこの単純な事実がわかっている清張ファンにお目にかかったためしがない。全く嘆かわしい。例えば、この作品「遠い接近」は、東洋、西洋絵画の美術史家としても定評のある、清張個人の研究テーマ ”遠近法” の隠喩にみちたものなのだ。遠近法は絵画の技法で、その構造が解明され、数学的に理論化されたのは、ルネッサンス期のヨーロッパとされる。この物語を一言で要約すると、「細密画」ということになる。もっと清張文学を上級コースの達人として理解したいなら、少し難解かもしれないが、「宇宙に開かれた光の劇場」上野和男・著を読むことをお薦めする。あなたの清張の読み方は、幼稚園児以下だよと非難されないために。
市民を拉致する赤紙(召集令状)の恐怖 ★★★★★
■ 【当初は週刊朝日の連載ミステリー 】
この長編ミステリー小説は、当初、週刊朝日に半年以上
に渡り連載され、凡そ五年後の1977年7月に文庫本初
版が出ております。週刊朝日に連載を始めたのは、著
者(清張)60歳の時です。

■ 【20年前の『召集令状』へのわだかまり 】
連載開始時は、既に、戦後二十年経ち、清張自身も、芥
川賞(’53年)、日本ジャーナリスト会議賞(’63年)、菊
池寛賞(’70年)などを受賞しており、既に、ミステリー作
家としての地位を固めた時期になっております。この時
期に、著者は二十年前の自分、即ち、34歳の中年版下
職人への『召集令状』という国家権力の拉致行為への
わだかまりを本著書によって、赤裸々に著わしている。

■ 【赤紙(召集令状)発行の実態を知る 】
小説そのものは、一兵士の個人的復讐ストーリーです。
しかし、著者本人の召集令状に基づいた体験により描
かれた内容ということで、俄然、単なるミステリーの領域
を超えております。天皇の名で出される赤紙、即ち、『召
集令状』をキーワードに、一市民家族を地獄の苦しみに
追い込む赤紙と言う国家権力、召集令状の不正な闇の
国家権力のカラクリの実態、大日本帝国の私的制裁の
横行する軍隊生活、兵士達の望郷の念と運命などを描
き出しております。ミステリー作家として「社会派」と言わ
しめる代表的な作品となっております。
戦争に弄ばれる庶民 ★★★★★
松本清張の作品は、スーパーヒーローは滅多に登場せず、
主人公が地味な庶民で、かつ報われない結果に終わることも多い。
戦争という時代の奔流に弄ばれ、平凡な日々から
地獄へ突き落とされた人々。
復讐とはあくまで許されないことなのか。
犯罪=悪→破滅という図式は絶対のものなのか。
読者に問いかけてくるようです。

清張さんの題名のつけ方は、いつも読了後にすばらしいなあと
感嘆させられます。
著者の長編作品のBEST3に入れたいと思う。