カラーではなく、モノクロの14枚の絵。それぞれの絵に表現されたミステリアスな幻想性も素敵ですし、なにより白黒の絵の中の光と翳の美しさ、これが実に見ごたえがあります。モノトーンの絵の中にきらめく光の輝きは、オールズバーグ・マジックとでも名づけたいもの。絵の中に吸い込まれるように見とれてしまいました。
一枚の絵を眺めた後で、「さて、この絵がつけられた話はどんなものだったんだろう」と想像してみる愉しさがあります。通常の絵本の愉しみとはかなり違っているので、ちっとも面白くないやと思う人もいるでしょう。
でも、例えばルネ・マグリットの絵がそうであるように、ここには絵を見て色々と空想の翼を羽ばたかせてみる面白さがあります。見る人それぞれに別々の話が、世界が広がるような味わいがあります。
最初のページにこの絵本がつくれれたなりゆきがのっていますが、ページのそれぞれが1つの物語の中の1場面の1ページだそうです。作者のハリス・バーディックは、今でも消息が分からず謎の人間であり、そんなところもこの絵本の不思議さを高めます。
絵それぞれがとても美しいので見ているだけで魅了されます。