思い浮かべて頂きたい――テレビの画面いっぱいに映し出された熟年女性の手が、若い娘の手を握っている。バーブラ・ストライザンドの手と、彼女にそっくりな15歳の人気シンガー、ローレン・フロストの手だ。2人は長い階段を上って行く。行き先には（おそらく）運命が待っている。3分の1まで上ったところで、バーブラは若い頃の自分に似た娘の手を放す…そしてバーブラが見守る中、娘は残りの階段を上り、可能性に満ちた未来に足を踏み入れて姿を消すのだ。
   お見事。こういうセンチメンタルな心理ドラマを今どき堂々とやれるのは、真のスターだけだ。実際、バーブラ以外の誰にできる? しかし、落ち着いて考えてみたい。この伝説的シンガーのミレニアム・コンサート（1999年12月31日、ラス・ヴェガスのMGMグランド・ホテルにて開催）では、甘美な自伝的色彩が見る者を心地よく包んだが、このシーンは――ほかにも自己言及的な場面がたくさん登場し、バーブラの人生とキャリアのさまざまな局面を想起させるのだけれど――包み隠すところのない誠実さゆえに、とても感動的なのだ。本作は、夢のような一夜（この年の大晦日がY2K問題で大騒ぎだったことを覚えている人はいるだろうか?）を映像で記録したものであり、同名の2枚組CDよりも完全な追体験を味わえる。上記のような特別なシーンをすべて振り返ってみたいなら、このビデオが一番だ。サプライズ・ゲストの登場（バリー・ギブ、ブライアン・アダムス、ニール・ダイアモンド、バーブラの息子ジェイソン・グールド）、ジュディ・ガーランドやフランク・シナトラ（もちろんビデオ映像）とのデュエット、ダンス名人セヴィアン・グローバーを迎えての「Brother Time」、シャーリー・マクレーンとのユーモラスなひととき、フロストとの数度にわたるコラボレーションなど、見どころ満載である。本作『Timeless - Live in Concert』が、バーブラの主張どおりに、2000年の初頭に幕を閉じた短いフェアウェル・ツアーの最初の一歩だったとするなら、ステージから永遠に去る方法としては最高だったと言えるだろう。（Tom Keogh, Amazon.com）