笑ったのは誰なのか。。。
★★★★★
「笑わない数学者」
タイトルとトリックに乖離があるように感じる。
そして、解明されるトリック。
この小説は犯罪に使われたトリックなんかどうでもよいのです。
このラストで笑ったのは誰だったのか。
「笑わない数学者」ということは、最後に笑っていたのは
数学者ではないということ。
ここまで読みこめた人だけがたどり着ける驚愕の結末がある。
認識の差から生まれるもの
★★★★☆
偉大な数学者の住む館で開かれたパーティーの席上、トリックによって或る物を消してみせる。一夜明けて、再び現れた時、別なものまで発見される。
或る事柄を定義するというのは、定義する人物の認識によって異なるのでしょう…。
「よいか、あらゆる課題は、現実と理想、あるいは事実と理論の間のギャップにある。それを自覚するけとだ。しかし、現実や事実は、常に真実とはいえない。それは、あくまでも、お前たちの目が観察したものだ。お前たちの頭が認識したものだ。それを自問するのだ。見ないものを考えるのが人間の思考なのだ。お前たちは、自分の姿が見えなくても、自分の存在を知っている。それが人間の能力ではないか」
どうしても犯人を当てたい人向き
★★☆☆☆
余りにも簡単すぎる真相。この犯人を当てられないようであれば、一生当てられないという位犯人の当たりやすさがウリ。どうしても当てたいという人にお勧め。
いつも通りの動機糞喰らえ主義、上滑りの会話群。足りない伏線、なのに誰でも分かる犯人。不思議だ。間の会話はすっ飛ばして読んでも何の問題なし。
作者は犯人を隠さないという新機軸を打ち出したのか?
本作品でも犀川&萌絵の馬鹿っぷりは最高潮で、どんなボンクラな読者にだって「早く気づけよ、馬鹿」と叱責されている筈。
それもこれも原因は、動かせっこないオリオン像を消してしまう、という余計な謎のせいである。もしあれを取っ払って他の謎を付け加えれば(色々面白い物が考えられる)随分違った物になったと思うが、ま、この作者にそこまで期待するのは無理か……。作者の推理小説を書くセンス不足を露呈させた作品。
みえみえの仕掛け
★★★☆☆
大掛かりな仕掛けが中核になっているが,この種のミステリーに慣れた読者なら,かなり早い段階で(場合によっては図とプロローグだけで)わかってしまうかもしれない.もう1つのトリックも隠すつもりがないようなわかりやすさで,真相の衝撃という点では「すべてがFになる」よりは落ちる.
ただ,数学者の精神性ややり取りには「すべてFになる」で表現仕切れていなかった奥深さがうまく描けている.数学者が言いそうなセリフで,思わずニヤリとしてしまう.
この点を評価して1点上げました.
忘れがたいラスト
★★★★☆
オリオン像消失の謎がかなり簡単にわかってしまうのはかまわないのだが、殺人計画が、他人が考案したその像消失トリックに完全に依存しているのは、ちょっと疑問に思った。像消失トリックが解明されれば、ほとんど自動的に犯人の計画も露見してしまうからである。こんな人まかせの殺人計画でいいのか?
しかし、登場人物たちの知的な会話はおもしろいし、クールな雰囲気もいい。そして最終章においてはっきり提示される、作中では解かれないままに終わる謎。誰が誰なのか、その答は…もしかしたら、これもまた最後の1行に集約されるのかもしれない。公園にたたずむ老人と少女(彼等は誰?)のイメージは、そのラスト1行で実に味わい深いものとなった。理科系のリリシズムということでは、今は亡きA.C.クラークが描くSFの読後感をも思わせる。