レビューも今さらな気はしますが…

もちろん陰陽座だから曲はファンの期待に答えうるものを聴かせてくれます。

ただいかんせん音の作りというか…

魔王戴天以降とは迫力が違うし、鬼哭転生あたりと比べても妖怪ヘヴィメタルとはいえない厚みです。


このアルバムの収録曲は個人的にライブアルバム、ライブDVD版のほうが好きだったりします。

組曲「義経」に代表される変化に富んだ内容の陰陽座中期の最高傑作です。
では各曲ごとの内容を見てみます。

１曲目　靂（かすみのふるめき）
ハードなリフに導かれて始まり、サビのコーラスなどスケールの大きさを感じさせる曲です。
ギターソロ前の黒猫のロングトーンにゾクゾクします。

２曲目　龍の雲を得る如し
一転してアップテンポのハードロックです。ボーカルのバッキングが格好良い。
この曲からドラムの斗羅のツインペダルが活躍します。黒猫のボーカルも冴え渡っています。

３曲目　彷徨える
アップテンポのハードロックに乗せて人間の根本である「喰らう」ことを歌っています。
凄くシンプルで共感できる歌詞です。

４曲目　甲賀忍法帖
陰陽座の忍法帖シリーズ。今回はポップな仕上がり。
サビのメロディー、歌詞と黒猫の艶やかで強力な声にグッときます。

５曲目　不知火
不思議な雰囲気を持つ曲。８ビートのロックナンバーですが幻想的です。
こんな曲は他のロックバンドでは聞けません。心にどんどん攻め込んできます。

６曲目　鬼ころし
ヘビーメタルというかなんというか強烈です。デスメタルに近いです。
斗羅のツインペダルが暴れまくりです。途中の黒猫のボーカルでデスメタルからロックに戻しています。

７曲目　月花
ちょっと単調なリフに導かれ、おやっと思うものの、アルペジオに黒猫の歌が聞こえると安心します。
瞬火のボーカルは男の色気が感じられます。黒猫とのツインボーカルもとてもいい感じです。

８曲目　蛟龍の巫女
アップテンポのハードロック。ギターのバッキングが実に多彩で曲の展開もドラマチックです。
黒猫の作曲能力の高さとハイトーンが聴くものに突き刺さってきます。

９曲目　組曲「義経」悪忌判官
陰陽座の最高傑作とも思える組曲「義経」の最初はハードロックナンバー。
陰陽座の歌詞は難しいのですがCDでは組曲の解説があり内容が分かりやすくなっています。
ツインボーカルも強力ですが、瞬火のボーカル、男の色気が凄いです。
この曲のリスナーの胸に迫りくる迫力は尋常では無いです。
ライブでも必ず演奏される名曲です。

１０曲目　組曲「義経」夢魔炎上
１３分４８秒もの大作。構成が実に巧みに作られており長さを全く感じさせません。
最初はゆったりとしたテンポでハードにメロディアスに展開します。
ギターメロディーに「和」を感じます。途中のアルペジオからベースの入る箇所はキングクリムゾンのようです。途中からアップテンポになり、瞬火と黒猫のボーカルが交互に歌い、斗羅のフィルインが縦横無尽に炸裂します。頼朝に愛されるために平家を討伐した義経が頼朝から追われる非常の運命が展開します。
義経を失った静御前は頼朝から過酷な仕打ちを受けますがここでは書けません。
この曲はあまりにもドラマチックで言葉を失います。日本ハードロック史上に残る名曲です。

１１曲目　組曲「義経」来世邂逅
美しいバラードです。全てを失った静御前の哀しみが黒猫の美しい声で歌われています。
すばらしい歌詞と曲、何も言うことはありません。泣けます。

１２曲目　我が屍を越えてゆけ
最後はポップなハードロックと黒猫の明るい歌声でホッとします。
最後のコーラスが格好よい。ライブでは大合唱しました。

以上、「臥龍點晴」のコメントでした。これでも全く書き足りない。

酷評している方がいらっしゃるようですが、そんな方はこのアルバムに対して、そういう耳を持っていないのでしょう。
私は夢幻泡影、鳳翼天翔から試聴しました。それから鬼哭転生と聴いていきましたが、このアルバムは聴きやすいと純粋に感じました。
メタルに対して歌唱力や演奏力を問う方がいますが、感じるままに良いと思えばそれで良いのではないかと。合わない方は合わないと割り切ってもらえば良い。
初めて陰陽座を聴かれる方は
●龍の雲を得る如し
●甲賀忍法帖
●不知火
●月花
●咬龍の巫女
●組曲「義経」
が聴きやすいです。
特にvoの黒猫さんが作曲した咬龍の巫女は私が一番好きな曲です。陰陽座の初期のファンは「陰陽師」が最高傑作であると言われてますが、私は咬龍の巫女もこれはこれで非常にメロスピだなぁと感激したのを覚えています。
もちろん陰陽師も大好きですよ!
メタルファンの方も批判ではなく理解を、分け隔てなく聴ける耳を持って聴いて頂ければファンの私からしても嬉しいですね。

これはいいアルバムです。陰陽座の底力、可能性を考えると「名盤」とまでは言い切れない
にしても、上質のメロディアス・ハードが詰まっています。リスナーの多くが若い世代だろ
うから、音が軽いだの、歌謡曲だのアニソンだのといった批判が出るのはしょうがない。
しかし、ハード・ロック、ヘヴィ・メタルの良し悪しは音のヘヴィさやマニアックなメロディ
だけで決まるものではないでしょう。もしもそうならディープ・パープルもレッド・ツェッペ
リンもすでにハード・ロックではないことになってしまうじゃないですか。
時代とともに音は過激になってきているから、そういう意味では軽い音が１st．からのファン
にとっては物足りないのかも知れません。
でもね、ここではっきりと言っておきたいのは…
「瞬火さんは、このアルバムを酷評している人たちよりも、おそらくたくさんのROCKを聴いて
きて、ROCKというものをはるかによく知っているはずだ」
ということです。
買うかどうか迷っているなら、ここは瞬火さんを信用して聴いてみるといいでしょう。

アニソンといえばアニソン。実際に使われていますし。
しかし、速いテンポの曲も多く非常にノリのよいアルバム。

龍の雲を得る如し、甲賀忍法帖、蛟龍の巫女はキャッチーで聴きやすい曲。
来世邂逅は切なく心に響くバラード。