復刊がうれしい落語と寄席好きのための本
★★★★☆
河出文庫からは安藤鶴夫『寄席はるあき』(2006年1月)や色川武大『寄席放浪記』(2007年2月)などの寄席・落語エッセーの復刊もあり、少なからず今後に期待していたが、この本も本当にうれしい1作。前述の2作品よりも出版社の苦労が伺えるのは複数の底本から読みやすく編集して提供してくれたこと。「落語・演芸評論の古典」ともいえる前半と、後半の「わが寄席青春録」の両方の趣を味わうことができる。寄席と落語を愛し、晩年は落語界のご意見番として多くの名人たちに影響を与えた著者の作品を、今後もぜひ復刊して欲しいと思うのは私だけではないはず。単なるノスタルジーではなく、現在の落語と向き合うためにも読む価値は大きい。