書籍のタイトル通り、この本はホームページ『新聞拡張員ゲンさんの嘆き』のＱ＆Ａの質問のうち、一部を抜き出して書籍化した物です。
「再編集した」事になっておりますが、文章はホームページに掲載されたものが内容そのままでこの書籍にも掲載されている部分が多く、ネット未公開のＱ＆Ａが含まれていたり、イラストが追加されているとはいえ、情報としてはネット掲載内容から見ると劣ります。
正直、ネットで公開されている内容を見た方が明らかにこの書籍を見るよりも充実しています。

しかし、ホームページで著者も述べているように、著者は持病を抱えており、「形になる物を残したい」という意志でこの書籍は出版されています。

訪問販売、新聞勧誘への対処法を本として持っておきたいのであればある程度はおすすめできます。

商品が何であれ、「訪問販売ではトラブルが起きやすい」というのは、誰もが納得するところでしょう。

だからこそ、消費者のためにクーリング・オフという法的措置があるのでしょうが、新聞の場合は、それだけでは解決しない問題が多いということが、ここに出てくる相談内容から読み取れます。

たとえば、いったい、どれだけの一般の人が、新聞の勧誘をしている人の大半が「新聞販売店の従業員とは別人」という事実を知っているでしょう？
この本は、そういった、新聞という商品の流通形態が、いかに複雑で特殊なものであるかを教えていくれています。

質問への回答をしているのは”ゲンさん”という現役の新聞拡張員なので、そのアドバイスは、どれも明快で、自信を持って答えているように感じました。

具体的には、「拡張員がヤクザという認識は正しいのですか？」といった、あまり表向きには出てこないような質問にも真摯に答えているなど、新聞業界の内部事情を垣間見ることができる点で、画期的な書物であると思いました。

ただ、書籍のタイトルにもあるように、この本は、ネットで公開されているものを再編集したものなので、サイトの方が、より多くの情報に触れられるでしょう。
しかし、著者も述べているように、この本の内容には、ネット未公開のものも含まれているのと、情報が要領よくまとめられているので、新聞業界のことを知りたい人や、訪問販売の営業方法を研究したい人にとっては、参考書として利用できる一冊になると思います。

また、初めて一人暮らしをする予定の学生さんや新社会人の方は、無用のトラブルを避ける意味でも、引っ越しに先立って読んでおいて損はないでしょう。