白磁の王者をつまびらかにする
★★★★★
ざっと読んだ第一印象が、「定窯いろいろ」。
中国古陶磁に興味のある日本人なら、好むと好まざるとに関わらず、
一度は定窯、それも北宋時代の、定窯牙白を視界に入れることに
なると思いますが…。
本書を読んで、あの天下の名窯も、試行錯誤の黎明期と、
迷走の末の衰退期があったことがよくわかり、ずっと親しみを持てる
ようになりました。
また、定窯の歴史が語られる中で、優秀な先輩、ケイ州窯との比較もあり、
これがなかなか面白かったです。(宋代ばかりに関心があったのが、唐代のものにも
興味をひかれるようになりました。てきめんです)
定窯は一日にしてならず!
ケイ州窯だけでなく、越州窯や、磁州窯、耀州窯などとの相互関係…中国の
「やきもの連続性」に気づいたとき、以前より中国古陶磁に親しんだという気持ちに
なれました。
豊富なカラー図版は、このシリーズの売りで、本書も多くのページを割いてあります。
我が国が所蔵する定白が、文句なしの一級品であることもよくわかります。
この本の欠点といえば、定窯の白磁が欲しくなってしまうことでしょうか。