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量子論の発展史 (ちくま学芸文庫)

価格: ¥1,575
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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フォン・ノイマンの量子論への貢献が書いてあります ★★★★★
行列力学と波動力学の関連が詳しく書かれています。
シュレージンガーが両者の同一性を書いたのが、1926
年。ノイマンがヒルベルト空間論を用いて数学的な証
明を与えたのが1927-1929年。

シュレージンガーと行列力学の関係は193ページあたり。
ノイマンによる理論の厳密化については255ページあた
りに書かれている。
量子力学の「暗黙知」を「形式知」に表出化する過程を忠実に再現 ★★★★☆
湯川先生は「物理講義」の中で「『既に創られた物理学』を学ぶことと、その物理学が創られた当時に創った本人が考えたことは全く違うんです。もしどちらも同じと思っている人は試験勉強だけをしてきた人です(笑)」と仰っています。本書を読めば、その真意がよく分かります。自分が学んできた量子力学は確かに理路整然としているのですが、「こんなのどうやって思いつくの?」という心のモヤモヤが残っていた訳ですが、本書のような「時間軸に沿った量子力学の発展史」を読むとそのような疑問も氷解します。過去の偉人たちが如何に量子力学を発展させていったのかが良く分かります。先人達は現代風解説に基づく「量子力学の法則の思い付き方」(例:Hamiltonianにおけるp_x→h/2πi・∂/∂x, E →ih/2π・∂/∂tの置換え)を最初から出来ていた訳ではないのです! 「暗黙知」から「形式知」に表出化する際に、過去の知見に基づく独特なアナロジーを理論物理屋さんは行う訳ですが、そういう思考の足跡をフォローするのに良い本だと思います。
このような「系譜を知る」本として、「スピンはめぐる」(朝永振一郎)、「X線からクォークまで」(エミリオ・セグレ)、「新版 電子と原子核の発見」(スティーブン・ワインバーグ)も読んでおきたいですね。朝永先生の「量子力学」も同時にお薦めです。本書で舌足らずになっている箇所をこれらの本でかなり補うことが出来ます。本書はかなり歯ごたえがある本であり、量子力学初学者には少しお薦めしにくいという点で★1つ減。(「現代の量子力学」(J・J・サクライ)レベルの本が理解出来る読者なら、★5つの刺激が得られることでしょう)

【追記】本書はめでたく復刊しました(→ 量子論の発展史)。吉田氏監修版とページ数が違っていますが(376頁→541頁)、これは本文のフォントが大きくなったため。あと、江沢洋先生が補訂を若干加え、解説(25頁)を寄せています。(かわりに吉田氏が寄せた文章は消えました) 吉田氏監修版を持っている方は買い直す必要は特にないと思います。
10章あたりまではそこそこ付いていけましたが ★★★★★
 最近の量子力学のテキストを見ると、電子の回折による粒子と波動の二重性の話があって、次はいきなりハミルトニアンを確率密度関数とみなしたシュレーディンガー方程式の紹介と簡単な制約条件の下での解法へと進むようだ。
 ハミルトニアンは古典物理の方法論のひとつであり、なんでここでハミルトニアンなのか、またそれが確率密度関数とされるのはなぜか。
 そうした展開方法は悪いものではないのだろうが、古典的描像とのつながりがないままに話が進展していくとき、受けとめる側では、勝手にあれこれと古典イメージとの対応を考えてしまい、それが適切でないために量子力学の理解が進まないなどというのはありそうなことだ。
 古典物理と量子物理の対応は、実は量子論の発展過程において常に配慮され、そのことがまた直接的に量子論の発展とも関わる。現在の形で量子力学を知る上で、しだいに(しかし急速に)積みあがってきたその過程を知ることは、現在の量子力学の理論を見通す上で非常に役に立つように思う。
 科学のひとつの分野がどうやって形作られていくのかを具体的に知りえた点でも、興味深かった。
量子論を振返って見れば ★★★★★
初学者などがいきなり量子力学の完成形(ディラックやランダウの教科書)を見せられると、その異様な光景に唖然とし拒絶するか、自分には理解できないけれどもミクロの現象を記述する便利な計算ツールであるとみなす。

行列力学、シュレディンガー方程式、変換理論、第二量子化、相対論化といった成果は非常に短い期間に成し遂げられたが、古典論よって量子現象を理解しようとする努力の上に少しづつ概念の飛躍を積み重ねていった結果である。そうした足場を取り去ったとき完成された量子的な論理の扱いが今見られる量子力学の形になっている。

本書では、まさに量子力学の概念形成、数学的発展の歴史が述べられている。教科としての量子力学は、対象を捉えるための概念を形成するための足場が少なく、ギャップを感ずるものであるが、本書によって当時の一級の物理学者が悩んだ過程を見ることで、物理としての量子の世界を理解することが可能となる。

本書は、朝永振一郎の「スピンはめぐる」と双璧をなすといえる。