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海峡―海峡幼年篇 (新潮文庫)

価格: ¥724
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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特別ではないが、決して平坦ではない少年の成長物語 ★★★★☆
シリーズ全編読みました。一言で言えば、ある少年の成長物語です。下村湖人の次郎物語、井上靖のしろばんばと共通するものがあります。一人の少年が見たこと、感じたこと、喜怒哀楽、どうしても理解できないこと、したくないこと…。いろんな経験を経て、自分の未来を見据える。大きなクライマックスや、大どんでん返しはありません。ですがそれ以上の物語がここにあります。
なんだかとても好きになりました ★★★★★
伊集院静さんの自伝的小説、三部作です。
大まかに言えば、一部が小学生。二部が中学生。三部が大学生となっています。
お話は伊集院さんの出身地でもある山口県防府市の小さな湾が舞台となっています。
時代はまだ戦争の傷跡が色濃く残る時代。
主人公の高木英雄は、朝鮮から海を渡り日本にやって来て一代で事業を大きくした父を持つ一家の長男として生まれる。
家には常に50人程の人々が住み、皆、父の斉二郎を慕い盛り立て英雄にも優しくしてくれる。
父はほとんど家にはいず、厳しく大きな人。
一方母は誰にでも分け隔て無く優しく、英雄にも優しく時には凛とした厳しさを持つ。
そんな英雄の周りには、朝鮮からやってきて祖国に帰って行く人達や、政府の移民政策で厳しい土地に行き体を壊して帰ってきた人達など、様々な思いや体験をした人がいる。
そして原爆の後遺症で死んでいく人など、死も常に付きまとう。
そんな中成長してゆく英雄は、やがて皆が跡継ぎとして期待されることに疑問を感じ始める・・・

と、めちゃくちゃ大まかなあらすじです。
話の中には性に対する話や恋の話もあったり、同級生との別れや死があったり、とてもヘビーな人生だけど、その時々の人々のふれあいが心情豊かに描かれていて読みながら涙したり笑ったりしてしまいました。

私が好きな場面は第二部「春雷」の中の場面。
中学を卒業する前に英雄とその仲間達と、彼らのマドンナ的存在である東京からきた積極的な少女・美智子と温泉へ行った時に、男子皆で告白し一人ずつキスしてもらうところです。
美智子はなんだか皆のお姉さんみたいな存在だな〜と思いました。
最初はハイカラでなんちゅー女や・・・と思ったんですけど(^^;)
美智子は中学を卒業すると東京へ帰ってしまうし、英雄は高校へ行くことになるけど、外へ働きに出てゆく仲間もいたりして、たぶんこんなに皆で楽しく過ごすのは最後になるだろうというところにも、寂しいのだけど楽しい日々があって、何ともいえない青春の香りがたまりませんでした。
今の時代では味わえないだろう別れが、とっても切なく感じました。

その後もいろんな出会いと別れがあり、英雄も将来の事を考えながら成長してゆくわけですが、そうしてどんな人生を送っていくのか、もしかしたらとこかで野たれ死んでしまうのかもしれない、そんな英雄の生き方に共感した物語でした。

伊集院さんの小説を読んだのは始めてです。
本屋で平積みしていたので・・・。
私の伊集院さんの印象といえば、夏目雅子さんの旦那、篠ひろ子さんの旦那ってぐらいでした(^_^;)
英雄の成長が楽しみ♪ ★★★★☆
幼年時代の英雄の心の動きや、それを取り巻く人達の心情などがとてもよく描かれている。英雄は日常生活の中の出会いや別れを通して、人間の喜びや悲しみをつかみとっていく。そして、だんだんと精神的に成長していく。その過程がとても面白い。これから英雄がどういう人生を歩んでいくのか、目が離せない。
二十歳前後の人に読んで欲しい ★★★★★
私は今二十一歳です。伊集院さんが週刊文春に連載していたエッセイ「二日酔い主義」の最終回に、この『海峡』『春雷』『岬へ』は、伊集院さん自身が、「読んでもらいたいと、初めて思った小説」と書かれていたのを読んで、読みました。
もう三冊通して泣いてばかりでした。

主人公・英雄が九歳のとき、かわいがってくれたリンさんが映画館の二階から墜ちて死ぬ、という場面から物語は始まる。瀬戸内海に面する山口の小さな町で英雄が体験する毎日が生き生きと、そして淡々と描かれている。海運業、商業を広く営む厳格な父、その父を頼り、慕って父の下で働き、そして寝食共にする人々で、英雄は大家族のような家で育つ。家や町の人々の出来事、広島の原爆が英雄の周りの人々に残した傷、友人や教師、恋。これらに触れて、英雄は成長していく。
大学へ進学し、英雄は町を出て上京する。そこには家や父への葛藤、自分は何をしたいのか、何をすべきなのか、そんな大きな迷いがあった。

今、大学を卒業して将来を考えなければいけない時期にある私には、この英雄の迷いが共感を持って理解できた。同じ境遇にある同年代の方々は多かれ少なかれ抱えている問題であろう。英雄に共感しながら話を読み進めると、英雄が最後に到達するところには、自分にも何かヒントがあるような気がした。そこに答えはないのだが、人が、心の中に持つべき大切なものを与えられた。
話の中には、弟や友の死、たくさんの様々な人との関わり合いも描かれる。普段は身近にあって気づかない人の温かさもきっと感じることができるだろう。

成長を感じました。 ★★★★☆
もともと少年小説と呼ばれるジャンルが好きな私ですが、何気なく取ったこの本で見事に引き込まれました。

芯のある少年英雄は、その土地で力のある親元で何不自由なく育つが、人の気持ちを汲み取る優しさを持ち合わせた子供です。坊ちゃまと呼ばれ、小さい時から何でも手に入ってしまったら、わがままになりがちですが、英雄を取り囲む周りの人々との交流で英雄は優しく強い人間に成長していきます。

青春編『岬へ』では弟との別れによって母親の強さをまざまざと見せ付けられることになります。私は3作通してこの場面が一番胸にきます。親の子を思う気持ちの強さは、男親と女親とでは表現こそ違えどもどちらも同じ思いなのですね。