全国に根強いファンをつかんで離さない、破滅系プログレロック界の孤高の姫君、畑亜貴さんのアルバム。ジャケットの絵からして雰囲気抜群、つまりまぁ「こんな曲がいっぱい入っている」と思って間違いない。かといって、辛気くさい陰鬱なメロディをチンタラチンタラと聴かされる自閉症的「ありがち」なモノとは大違いです。まず旋律が美しい。これがプログレの軽快感をもってひたすら疾走します。でも「破滅系」ですから、軽快に疾走して疾走しまくった挙げ句の果てに、行き着く先は墓場になるってダケです(笑)。♪世界なんて、終わりなさい~。
CDとしてはアルバム「棺桶島」の方が先に出ていた。このCDに収録されているのはそれ以前の作品群で、そもそもはカセットテープ(3本出ていた)に入れられてライブ会場でバラバラに売られていたもの。畑亜貴マニアにとっては待ちに待たれたCD化でした。
今では「あずまんが大王」でのかわいくポップな詩や、「灰羽連盟」のセピア色のリリシズムを感じさせる詩で知られることが多い畑亜貴さんですが、むしろこっちの、刹那的に破滅を指向する詩にこそ、オリジナリティにあふれた独特の世界を展開しているように思います。これがプログレ好きならたまらない軽快な畑亜貴サウンドと相まって、魔術的でデモーニッシュなオーラを発散していきます。
黒百合姉妹とか、ALI PROJECT、J.A.シーザーあたりを聴いているひとには、強力にお薦め。
これでいて、「空耳ケーキ」(あずまんが大王)みたいな作詞もしちゃうのだから、その多岐にわたるクリエイティビティには感嘆するしかない!