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天下騒乱 鍵屋ノ辻(上) (角川文庫)

価格: ¥660
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川書店
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本書は、二代将軍秀忠から三代将軍家光の治世前半における幕府閣老土井大炊頭(おおいのかみ)利勝を主役に、世に名高い「伊賀越えの仇討ち」を絡めて描く骨太の時代小説。物語の展開が早く、飽きずに読み通せる。柳生宗矩、十兵衛父子や大久保彦左衛門など、この時代おなじみの面々も随所に顔を出す。
江戸初期を舞台とした従来の歴史小説で、最も多く登場する幕閣といえば「知恵伊豆」と呼ばれた松平伊豆守信綱だろう。この華やかな伊豆守に比べると土井大炊頭は地味だが、実際はかなりスケールの大きい政治家だったようだ。わがままな家光将軍にも、言う事すべて聞き届られるほど信任が厚く、筆頭老中(のちに大老)として権力を一手に掌握。また本書にある通り、彼は実は神君家康の落胤であり、その付託を受けたとの説は根強い。この大炊頭が、幕臣・譜代大名と外様大名の軋轢の沈静化に苦慮し、やがて一策を講じることになる。
一方、大和浪人・荒木又右衛門は、義弟の元池田家家臣、渡部数馬を助け、事態にほんろうされながらも、武士の意気地を貫こうと仇討ちに向けて動き出す。これを迎え撃つ河合一族とのぶつかり合いは、読みごたえがある。そこに映し出されているのは、世が定まり職業軍人という現実的な存在意義が薄れる中で、武士としての行動様式の美学をまっとうすることに新たな意義を見出す壮烈な人々の姿だ。(白川 楓)
荒木又衛門 ★★★★☆
前半は話の展開が大きく内容のわりに登場人物が多くて焦点が掴めなかった。土井利勝と荒木又衛門との関係が明らかになるほど読み応えが出てきた。天下泰平の初期にあって幕府、旗本、外様大名を巻き込んだ作品はなかなか面白かった。歴史小説162作品目の感想。2008/10/17
“合戦”的視点で描いた「鍵屋の辻」の決闘 ★★★★★
日本三大仇討ちの一つと言われる「鍵屋の辻」の決闘を、肉体と肉体の個人的争闘ではなく、著者の出世作「四十七人の刺客」同様一つの“合戦”的視点で描いた作品。戦国の荒い気風がわずかに残る三代将軍家光の時代に、ホモセクシャルな横恋慕から引き起こされた刃傷沙汰が、旗本対外様大名の意地の張り合いへと発展、そこに戦国のカオス状態から泰平の世へのソフトランディングに心を砕く家康の隠し子・老中土井利勝の政治的思惑が絡むという、池宮作品らしい奥行きのあるストーリーである。
荒木又右衛門については名前こそ聞いたことはあったが、この仇討ちの結末や又右衛門の運命について全く知識がなかったため、最後の“結末=身の処し方”までを興味深く読み通すことができた。
トップ政治家の苦悩 ★★★☆☆
正月の10時間時代劇ドラマの原作だと知り、購読してみた。
恥ずかしながら「荒木又右衛門」も「鍵屋ノ辻」も今作品を見るまでは全然知らなかった為、予備知識なく新鮮な気持ちで読むことが出来た。

後に260年間続いた江戸幕府も、この時代はまだ安泰とは言えずトップに立つ土井利勝はじめ政治家も権力維持の為、骨を折って
いた様が良くわかる。一藩内の刃傷事件から始まったこの事件も、「旗本」と「外様」の対立に発展し、一つ対応を誤れば徳川家の
将来にかかわる程の騒動になりかねない状況で、それぞれの立場でのメンツの張り合いなどは現代にも合い通ずるものがあり面白い。

少し気になるのが登場人物の名前である。「又右衛門」「又五郎」「又四郎」「甚左衛門」など似た名前が多く、読んでいて迷う場所がいくつかあった。まぁ仕方がないけど。
おもしろいがマニアック ★★★★☆
本書のテーマである荒木又右衛門と渡辺数馬による仇討ち、伊賀越え(鍵屋の辻)の決闘は、昭和40年代までには講談でも人気で随分映画化されたが、それ以降の世代には、ほぼ知識が皆無だろう。若い世代にはかえって目新しい歴史小説のテーマである。
著者は、このテーマを、幕閣の論理、すなわち土井利勝、松平信綱らの視点を前面に導入して描くところに新しさがあり、伊賀越えの決闘に至る政治的背景の描写は怖ろしく細かく、一読しても整理困難なくらい複雑で、たぶん類書の中でも抜けているだろう。マニアックである。
難をいえば、同じ題材を扱った戸川幸夫の名作「死闘記」にかなりヒントを得たように思える部分がある。しかし、現在は殆ど入手不能なので、読者としてはこの本で荒木又右衛門に惚れ込むことで十分である。とにかく荒木又右衛門は文句なしにかっこいい。60代以上の男にとっては永遠のヒーローである。