2003年5月にハリー・コニックJr.はハリウッドのキャピトル・スタジオで2枚のアルバムを同時進行の形で録音した。1枚は03年のクリスマス・シーズンに発売された『Harry for the Holidays 』で、もう1枚が本作。といってもコンセプトが別なので、雰囲気はまったく違っている。これはロマンティックなラヴ・バラード集だ。ソニー・ミュージックの社長ドン・アイナーから、「私の世代の曲を集めたアルバムを作ってみないか」といわれたのがきっかけとなって、本作は生まれたのだとか。その結果、選曲はオールド・スタンダード中心。50年代にリヴァイバル・ヒットした曲も含まれている。
たとえばプラターズ56年のヒット曲「マイ・プレイヤー」。実はこの曲はインク・スポッツが39年にヒットさせた曲であり、ハリーはそのことを知っているから今回取り上げたのだという。そういうスタンスで20~30年代の曲に光をあてている姿勢が素晴らしい。そして「マイ・ブルー・ヘヴン」にブラジリアン・テイストを加味したりと、アレンジ(全曲自身が手がけている)も冴えている。(市川正二)