タイムリーな、”国際基準からみた日本人の働かされ方”
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いま日本の多くの若者が、日雇い派遣などの非正規雇用によって使い捨て同然の劣悪な環境に置かれている。
2007年、ILOは、”この国のこの異常な働かせ方”に対して
「非正規雇用拡大は短期的に日本に競争優位をもたらすが、明らかに長期的に持続可能でない・・
経済成長の源泉となる人的資本の形成がなされにくい」と警告している。
そのILOを今から30年前に訪れた若き弁護士がいた。
長時間労働・過労死問題に取り組むなか、日本の法体系に限界を感じた著者である。
東京労組の仲間たちと「ILO条約の批准を進める会」を結成し、“ 国際労働基準で日本を変えよう”を合い言葉に、
スイスはジュネーブ、“労働者のための巨大な砦”ILOの門を初めて叩く。
歴史に残る画期的な出来事である。
それから十数回のILO訪問は、「野村證券事件(女性就業差別)」の解決という果実をもたらし、
さらに郵政民営化、国労、教員の過重労働問題などへと続いている。
本書はそれらの貴重な記録であると同時に、初心者のためのILO入門でもあり、
かつ国際基準からみた日本の働く者の状況を浮き彫りにしたきわめてタイムリーな内容の必読の書である。
また、本書には7編の「Box」というコラムがあり、筆者が寸暇を惜しんで訪れた各地の旧跡、美術館など
について書かれている。息抜き的コーナーながら、筆者の並々ならぬ文化芸術にたいする造詣の深さを伺わせる。