構成の妙
★★★★☆
葵新陰流風鳴の剣を倒さんとする細川藩の刺客との戦いが、全編を通じて出てきます。
それとは独立に、主人公の同心としての事件の捜査が、連作短編小説として描かれます。
確か藤沢周平にもこんな形式の時代物がありました。用心棒シリーズでしたか。ちょっと自身ありませんが。
いってみれば、一粒で二度おいしい構造になっています。
作風としては、私は実はあとのほうの「秘剣封印」から読んだのですが、シリーズ初期のこの巻では、ユーモア度がまだそれほどではないかな、と感じました。
それでも気軽に読めて、楽しい時代劇です。
決闘はあるものの、倒される細川藩の剣士たちが明るくて、救いになっています。
軽いエンターテイメントとして読み続けたくなる
★★★★☆
御三卿・田安徳川家のおぼっちゃまがその身分を隠し、
お忍びの延長くらいの感じで定町回り同心見習いとなり、
一風変わった事件を次々と解決していく連作集第二巻。
この世間知らずのおぼっちゃま、とある剣の流派の秘密特訓を受け
すこぶる腕の立つ正統な後継者であるというのが裏設定。
謎解きも時代考証も本格派というにはやや甘いところがあり、
捕物よりもメインキャラクターのコミカルな日常や剣の話に
ストーリーの中心が移ってきているのはやや気になる。
しかし幕末の不穏な空気の中での剣戟シーンと
そこに至るまでのヒーロー物ならでは詰めは悪くない。
謎の剣
★★★☆☆
『消えた十手』に続く、「若さま同心 徳川竜之助」シリーズの第2弾。
次々と新作を書き下ろしている風野氏だが、きちんとクオリティを保っているのが偉い。本書も話として面白く、ひねりがあり、上手く出来ている。
基本的には4本の短篇からなる物語。しかし、大きな枠で全体が囲われており、読み進めるうち物語が収斂していくのが心地よい。
軽い気持ちで手に取ったが、意外な収穫だったという気にさせてくれる好著。