科学嫌いな方にもオススメ
★★★★★
生命科学の最前線に活躍する著者が自分や飼い犬の死と向き合う中で淡々と生まれる文章が清冽だった。闘病の中で著者自身の観測点が生から死へ移動していく。生に近い側から望む生と死、死に近い側から望む生と死。対象は同じであっても観測点が移動することでテーマが浮き彫りにされていく。全体を通して冷静な科学の目と血の通った情感の双方からバランス良く書き上げられている。お陰で右脳も左脳も強く刺激された。事実に関してはドラマチックな表現を控え、自らの感情描写に関してもその姿勢は同じという印象を受けた。内容や文章に贅肉(ぜいにく)が無く、著者の人柄にも好感を抱かせる。