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北の海〈上〉 (新潮文庫)

価格: ¥662
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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ネトゲ廃人 ★★★★★
 高校受験に失敗した少年はのんきに過ごしています。中学を卒業し浪人中にもかかわらず中学の制服を着て中学の柔道部の練習に通うようなそんな毎日。もちろん勉強なんかしません。周りの人があきれるほど本人はのんびり過ごしています。
 そんな中、中学の柔道場にたまたま立ち寄った高校生に「金沢の高校で柔道をやらないか」と勧誘されます。大きな魅力を感じた少年は金沢の高校の柔道だけの生活に興味を持ちます。
 
 印象的な台詞を引用します「二年の部員は筋金入りですよ。人間らしい血なんて、一滴も持たなくなる。逆さにして振ってみても人間の血なんか一滴も出てこない。出てくるのは汗ばかりだ。そうなると見事ですよ。六高に勝つことしか考えなくなる。親のことも、兄弟のことも考えなくなる。考えることは六高に勝つことばかりだ。人生も、学校の成績も、落第も、及第も考えなくなる。まったく、ねえ、変な学生があるものだ」まるで何かの依存症だ。でもこんなにのめりこめることがあるなんてちょっとうらやましい。限られた人たちしか高等教育を受けられなかった時代にはなお贅沢なことだったのでしょう。

爽やかに、おおらかに、ユーモラスに、輝かしい時が… ★★★★★
旧制中学を卒業してぶらぶらしていた洪作はふとしたきっかけで四高の柔道に惹かれ、金沢へ行く。そしてまだ入学もしていない四高柔道部の個性的な面面と共に道場「無声堂」で汗を流し、金沢の町や海で遊ぶ。小説の筋を言えば基本的にそれだけである。

奇想天外な事件も、胸を焦がす大恋愛も、文学青年じみた退廃も一切無し。ただひたすら、爽やかに、おおらかに、ユーモラスに、輝かしい時が流れて行く。よく井上靖の小説に「悪人」は登場しないと言われるがこの作品でも然り、乱暴者や厳格な偏屈者は出て来るけれど、皆どこか憎めない。実在していたら会いたくなるような連中ばかりである。

もし、こんな青春の時がいつまでも続いたら……、洪作が両親の住む台北行きの船に乗り込むラスト・シーンに来ると、何度読み返してもそんな淡い憧憬と寂しさを覚えてしまうのは私だけであろうか。自伝的要素の強い作品だけに、井上靖自身もきっと、この作品の中にそういった青春への鎮魂歌としての感慨をこめていたに違いない。

個人的に「北の海」は「三四郎」と並んで大好きな青春小説で、日本文学には稀な清潔さを持った作品として非常に貴重な存在だと思う。「あすなろ物語」の悲哀に満ちた世界に惹かれた人にも、是非この小説を読んで頂きたい。

淡きこと雲の如し ★★★★★
 寮生として柔道漬けの日々を送っていた高校二年のとき初めて読んで以来、何度読み返した事だろう。
 一人の少年の成長記であるが、物語は主人公と同化したが如く淡々と進み、文章にさえ何の仕掛けもない。
 思春期という、エネルギーと自我がアンバランスな人生の一時期を迎える少年達にとって、ある種の指標になるはずである。
 また、元少年だった人にとっては、胸がしめつけられるような懐かしさ、恥ずかしさ、儚さを思い起こさせる起爆剤になると思う。

 それまでは何も考えず、ただ夢中で読み返していたが、ふと、この小説の素晴らしさを他人に説明できない自分に気付き愕然とした。
 元来、国文科に在籍しながら、作品を分解して鑑賞する事に意義を見出せず学生の本分をまっとうしなかったワシが、何を今更だが、「北の海」を説明できないという一点に於いて講義と演習に身を入れなかった事を悔いている。
 
 
 

素晴らしきかな青春時代 ★★★★★
中学校を卒業した洪作。浪人という肩身の狭い境遇をおくびともせず
柔道に打ち込みます。そんな洪作の前に現れた一人の高校生、蓮見。彼の柔道に心底惹かれ洪作は蓮見の学ぶ金沢へと旅立ちます。
この小説はしろばんば、夏草冬波に続く3部作目で井上靖氏の代表作。
私は3作品の中ではこの物語が一押しです。

読み進む内に揺れ動く洪作の気持ちが若かりし頃の自分とフィードバックされていき、なんとも表現しがたい甘ーい感触を思い出します。
よく晴れた休日の午後にお薦め。