著者の一志治夫さんが生み出す文章は、いつもすごく素敵です。過去の作品も読んでいますが、いつもキレがあって、かっこよくて、気持ちのよいリズムで進んでいきます。それでもなぜか、すごく華のある、色つやのある素敵な文章なんですね。今回は特に、目には見えない「音」、小澤征爾さんの指揮によってオーケストラから吐き出される「音」を、目に見えるような形で伝えてくれた気がします。まるで、自分の目の前にオーケストラがいるような、そんな不思議な感覚をもたらしてくれます。
この本を読むときは、周りに音のない状況で読むといいかなとも思います。頭の中にどんどん音が生まれてきますから。小澤征爾さんや、クラシック音楽が好きな方はもちろんのこと、ヨーロッパに興味のある方にもお勧めです。文章も写真もデザインも、全てが素敵な1冊でした。