学術的な厳密性を有した貴重な一冊
★★★★☆
著者は古地図の権威として日本でも有数の存在。
地図を解読して瞬時に地形や街区まで判断する事は、ちょうど複雑な楽譜から頭の中に音を
構成するのと同じくらい難しく高い技能で、本当に出来る人は少ない。
そうした背景があってこそ、学術的な検証のレベルでも通用する厳密性を有した、一つの研究書としての性格をはっきりと持っている。
そこが巷間に多い「趣味」や「雑学」の類書とは一線を画する所以だが、一方で、あくまでも分りやすくスマートな語り口によって、決して「固い」本にはなっていない。
この方面に少しでも興味を持った方には必読の書と言えよう。
願わくば、続編として「都市と鉄道のあり方」(駅前が繁華街になる日本と、旧市街から離れた中央駅の多いヨーロッパとの比較など)や、かつて日本人の作った「外地」の駅や鉄道の
姿の記憶など、更に広く教えて頂きたいと思っている。
鉄道ファンに新たな楽しみ方を教えてくれるマニア必見の書
★★★★★
日本の歴史地理専門家ならではの貴重な古地図、鉄道図、写真などを使って、鉄道成立の過程で生じた見過ごしそうな線路の並びや名称などの謎をわかりやすく説明してくれる。地図にアレルギーのある読者でも、SLや古い車両、旧駅舎の写真、戦前の時刻表など、レトロな気分を楽しむことができる。また、機会があれば紹介されたポイントに足を運んでみたくなる。一読の価値あり。
タイトルどおりのマニアな本
★★★☆☆
タイトルのとおりの著作である。
はっきりいって、かなりマニアックな内容。鉄道好きで、地形図好きな人でないと読んではいけないような気がしてしまう。
とはいっても、著作としての切り口はなかなか斬新。例えば、関東近郊の鉄道網がどのような経緯をたどって拡充されていったのかを地図を交えて解説するあたり。
特に印象が強いのは、川越へ伸びている西武鉄道が、最初は中央線の国分寺駅から所沢経由で川越を結んでいた、というところで、歴史的には当たり前なのかもしれないが、今現在ではなんでこんな方角に短い支線が、と思うような線が実はオリジナルだった、というギャップが楽しい。
まあ、そうは言っても一般の感覚からすると、それで?、という話なので、いずれにせよ相当マニアックな本であることは間違いないでしょう。