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Skellig

価格: ¥661
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Yearling
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希望と再生の物語 ★★★★★
本書を手に取った理由はファンにしてみれば不謹慎そのもので、私はある講演の演題に(図らずも)本書の表題の一部を借りた、そのために内容を知っておく必要に駆られたのである。図らずも、というのは、自分の創造だと思っていたら、あとで同じ表現が用いられているのを知ったからで、もしかしたら記憶のどこかに本書の名前が引っかかっていたのかもしれない。それにしても私は今まで「創元推理」とはほぼ無縁だったのだから不思議なことである。

短い節の積み重ねで成り立つ、なるほど子ども向けのつくりであるが、内容は堂々たるファンタジーである。原題であるSkelligは「スケリグ・マイケル島」という実在の島からとられた由であり、主人公のマイケルもここからだろうと思われる。結局、Skelligが何者であったのかは明かされないけれど、もし彼が「希望」のメタファーだったのだとしたら、この作品は肉体の死や精神の危機からの再生の物語ということになる。

なお蛇足であるが、第38節に出てくるペルセポネの神話は、(いろいろ異説があるのかもしれないが)誤解ではないか。春をもたらすのはペルセポネの母デメテル(豊穣の神)であり、ペルセポネではない。またペルセポネは冥界の王である夫ハデスから許しを得て実家に戻るのだから(逃げてくるわけではないのだから)、帰り道に難渋するというマイケルの空想も神話に反すると思う。故意かもしれない。しかし、子ども向けだからこそ、こういう細部には正確を期してほしい。
彼と赤ちゃんとミナ ★★★★☆
タイトルに惹かれました。
物置で見つけた彼と、生まれたばかりの赤ちゃん、
そしてとなりに住む、ブレイクを愛する少女ミナの肩胛骨の起伏が
少年の目を通して描かれてる。
ミナは、陽性のメロニー、という感じもしました。(サイダーハウスルールの)
全体の調和が美しい一冊 ★★★★★
児童文学に私が求めるものの一つに、得体の知れない不気味さがあります。宮沢賢治の作品を読んだときの、あの奇妙な違和感(もしかしたらそれは宗教に基づく違和感かもしれませんが)。そんなものを久しく自分が体験していないことに気付きました。
丁寧で、シンプルで、違和感を抱かせる。
児童文学として、必要なものは全て備わっています。
あとは、作品を楽しめるだけ自分がこどものこころを失っていないか。

もしまだ失っていなければ、この作品はたいそう面白いと思います。

装丁も淡い色使いですごく素敵です。

美しい物語 ★★★★☆
一人暮らしをしていた老人が亡くなった後、残されていた古い家に越してきたMichaelの家族。
ペンキを塗り替えて、壁紙を張り替えて、荒れた庭を手入れして、池や花壇を造って…
その家は、生まれてくる妹を迎えるために、新しく生まれ変わるはずだった。
でも、家がまだ何も変わらないうちに、早く生まれてきてしまった妹。
妹について回って離れない死の匂いは、まるで、古い、荒れた家のせいのようで…

そんな不安に満ちたある日、
荒れた庭にある、今にも潰れそうなガレージの奥で、Michaelは埃や虫の死骸にまみれた男を見つける。
動こうともせず、助けを拒否し、ただただ、死を待っているだけのような男。
その男の背中に触った時、Michaelは、肩甲骨の場所に、何かがあるのに気づく。


人の姿をして、背中に翼を持って…
一瞬、‘天使’と形容してしまいそうになるSkelligの姿。

でも、Skelligは、決して、無垢で清らかな存在ではない。
埃にまみれ、虫の死骸にまみれて蹲っていた、投げやりな姿、
中華やビールをおいしそうに飲み食いする俗物性、
虫や獣を食べる肉食獣の臭い、餌の獣を丸呑みするフクロウのような習性…

でも、そんなSkelligが命を取り戻していく姿は、確かに美しい。

フクロウが運ぶ餌を食べるシーンは、
下手をすれば嫌悪感が沸いてもおかしくない光景なのに、なぜか、とてつもなく美しい。
残酷で、優しくて、美しい。

感動、と言うのとはちょっと違う気がする。
清らかでも無垢でもない、残酷で強くて、しなやかな命の美しさが心に残る。
「どうってことないよ。現実と夢はいつだってごっちゃなんだから。」 ★★★★★
「肩胛骨って何のためにあるの?」少年はある日、ガレージで不思議な「彼」を見つけます…。学校には行かず鳥の絵を描く少女ともお友達になり、一緒に「彼」を見に行こうと誘い------。

不思議な雰囲気のある作品です。特に意外な展開はありませんでしたが思ってたよりも読み易い薄い本でした。まとまってるし、登場人物やセリフが印象的でスラスラと読めました。私は好きな本です。改行も多いので読み易かったです。

粘土シーンの
「魔法みたい、ね?」
「魔法みたい、だね」のミナとマイケルの二人のセリフが好きです。途中の「むきだしの床板の上にたまった月光のプール」という描写も好きです。月光のプールなんてとても美しい表現の仕方だなと思いました。他にも「何ヵ月もの死んだ様な季節の後に、春がいっせいに世界を生き返らせる」「この世に生命が戻ってくる」という描写も好きです。冬と春を感じた一節でした。「あたしたち、いつまでも憶えてるよ。」
確かに彼女たちは憶えているのでしょう。不可思議な存在の「彼」を……。ミナなら大人になっても忘れない気がしました。マイケルも妹を見るたび思い出す気がします。不可思議な「彼」との出会い、肩胛骨ってなに?…妹の命を救いたい…、3人で踊ったこと、「世界がまだ存在してるかどうか確かめてる」それは誰も気付かないような小さくて静かな…物語で、だけど確かに起こっている奇跡の出会いなのかもしれない。


雰囲気も登場人物も会話もセリフも何だか魅力がありました。表紙は人形の写真で、不思議な雰囲気をかもし出しています。その表紙とタイトルで読んでみたいなと思いましたが、あえてこの写真の表紙はいらなかったかも?インパクトあるから良いですが、写真や絵なんて要らないと思わせてくれる本でした。