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冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷 (双葉文庫―日本推理作家協会賞受賞作全集)

価格: ¥1,200
カテゴリ: 文庫
ブランド: 双葉社
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ブックガイドとして ★★★★☆
「ミステリマガジン」に1986年から1992年にかけて行われた連載「活劇小説
論」をもとに、まとめられた評論である。総量は原稿用紙1100枚に及ぶ。同じよ
うな長編評論でも、野崎六助『北米探偵小説論』や笠井潔『探偵小説論』とは大きく
テイストを異にする。後者2つは、基本的に著者の設定した大きな枠組みの中で、
個々の作品を読むことに対して、本書はとにかく作品を虚心に読み、その細部を楽し
むことから論を出発させているという違いである。主要な作品については、あらすじ
がわかりやすく記されていて、ガイドブックとしても、活用できる。

ただし、この美風は裏返すと、本書の弱点ともいえる。著者は、一つ一つの作品・作
家を論じるために、過去の読書の記憶に頼るのでなく、もう一度読み直すことを自分
に課したルールとしている。そのため、どうしても足が重くなり、上空から俯瞰する
評論としては、その切れ味は鈍い。

多少強引でも、自分の読みの枠組みに引きつけてどんどん展開させていった方が、
評論それ自体は面白くなる場合もあると思う。しかし、それは著者の方法ではない
ようだ。

もうひとつ。あしかけ8年間にわたって書かれているせいなのか、一気読みを誘うよ
うなドライブ感が、本書そのものに乏しい。通読用の書物にするのでなく、長編ミス
テリを読む傍らに本書をおくのがよさそうだ。小説に疲れたときに本書の一章を挟む
と、とてもよい感じである。もともと雑誌連載だから、その形式で味わうようなもの
といえるかもしれない。

それにしても、著者の博捜ぶりには教えられます。もちろんスチーブンソン『宝島』
や曲亭馬琴『南総里見八犬伝』は有名ですが、セシル・スコット・フォレスターの
海洋小説「ホーンブロワー・シリーズ」や、角田喜久雄の時代伝奇小説などは、私に
とっては全く新しい知識で勉強になりました。