死と向き合う生
★★★★☆
本書は、西行、良寛、明恵、道元の足跡を記した史伝ではない。医師であり作家であった著者が、大患を得て死と向き合い心で格闘した軌跡である。それは宗教に縋り信仰に救いを求めたのではない。4人の高僧はいずれもタイプが異なるが、死を冷静に飲み込みながら、両手足でしっかり現世を抱え、現世を浄土たらしめんと懸命に生き抜いた先駆者と捉らえている。どこまでも、現世での生命を明々と燃え輝かしきろうとすることによって、死を怖れずもがき逃れるのでもなく、毅然と死を受け入れ乗り越え、生を全うしたのである。地上一浮にかび上がり生き抜こうとした魂の叫びである。