これは、つらい
★★★★★
圧倒的な強さの、兄景一郎、まだ15才であと5年をたつとこの兄と命のやりとりを運命づけられている、弟森之助。
この二人の運面を大きな流れにして、一方本作では、兄弟は柳生の闇に立ち向かわざるを得なくなる。
押しつぶされそうな、山の民を守る森之助は、黒澤明の『七人の侍』を一人で演ずるような、けなげでもろく、そして大きく成長する姿が頼もしくもある。
いつものように、いや、いつも以上に、ストイックで、強烈な強さの兄景一郎の30半ばにしてすでに老成したとも思える、達観した生き方は魅力的でもあり、またきわどくもある。
剣劇シーンを書かせたら、北方に勝る者はない。
今回は、珍しく集団での戦いもあった。圧倒的な不利の中で戦わざるを得ない山の民が哀れでならない。
強い強すぎる主人公景一郎を今回はちょっと外し、悩み多い若き剣士森之助を中心に据えた本書では、読者も15才の伸び盛り、多感な森之助になって、喉がひりつくように生きてみることだろう。
あぁ、次巻が楽しみでもあり、怖くもあり。