脳の前頭前野とは、意欲や判断力、情動抑制など、人間らしさを保つために重要な働きをしている部分。この部分が活性化したときに現れるのが、β波と呼ばれる脳波である。脳神経学者の著者は簡易型の脳波計を開発し、テレビゲームをしているときの脳波の動きを記録することに成功した。それによると、ゲームを始めてすぐにβ波が激減していく様子がよくわかる。β波が減っている状態というのは、痴呆者の脳波とそっくりな状態だそうだ。つまり、テレビゲームに熱中している人の脳は、痴呆者の脳と同じく、まったく活性化していないということになる。
著者は被験者を、幼いころからテレビゲームに親しんでいる「ゲーム脳」型人間から、まったくテレビゲームをしたことがない「ノーマル脳」型人間、そしてそれぞれの中間タイプの4つに分けてその脳波を調査しているが、「ゲーム脳」は、ゲームをしていないときでも働きが鈍くなっていることが一目瞭然である。ゲームにはまっている子どもでも、この脳波データを見たら、怖がってゲームをやめようとすると著者は言う。
子どもとテレビゲームとの関係に悩んでいる親はもちろん、子ども自身もこのデータから「ゲーム脳の恐怖」を実感してほしいものだ。(朝倉真弓)