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果てしなき探求〈下〉―知的自伝 (岩波現代文庫)

価格: ¥1,050
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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演繹と反証 ★★★★★
科学理論における進歩史観を再考するターニング・ポイントとなったクーン、ファイヤアーベントとは一線を画す、
内在的進歩史観の持ち主、ポパーの愉快な自伝である。

「科学理論は常に仮説または推測にとどまる」
科学理論とは「立証された」仮説ではなく、「永遠の」仮説に過ぎない。
科学理論が演繹的な体系(全称的理論)であるにも関わらず、観察は単称言明であり、
どんなに観察を重ねても、全称的理論は単称言明から導出できないからである。

ポパーのわかりやすさは、科学理論は観察可能な諸事実と衝突しうるので、単称言明によって反駁されうると考え、
科学理論を帰納体系から演繹体系へと再定義したうえで、科学と似非科学の境界を「反証可能性の有無」だと咀嚼したことである。
不断に変化し、永久に決定的でない、批判的議論の結論が「その時代の科学」と述べ、不可逆的な進歩史観を肯定したポパーであるが、
自身の境界設定基準(反証可能=科学、反証不可能=似非科学)が反証不可能であるという陥穽に至ってしまう・・・

異なる理論体系間では、同一の専門用語であっても同義ではなく、単純な包含関係にはない(共約不可能性)うえ、
専門用語を有機的に結びつける論理学にも共約不可能性を埋め合わせる術がない以上、進歩史観への盲信は慎まれなくてはならない。
それにしても、ヴィトゲンシュタインとの会合の顛末には笑ってしまった・・・