本当に、題名どおりの・・・
★★★★☆
エッセイとは本来こういうものを指すのでしょう。
日常生活の些細なことについて、洒脱で軽妙な文章で綴っています。
どれも読みやすくて、面白いです。
語り口がやや上から目線なのも、物書きの地位が現在より高かった20世紀初頭の空気を感じさせ、楽しいです。
読みやすさに関しては、訳者の力も大きいのでしょうね。
でも、これ、教養として読む類の古典ではないと思います。
古典を読んだことで何かしらハクがつくといった類の物ではないと思います。
決して悪口ではないです。むしろほめ言葉です。
肩肘張らずに、普通に読んで面白い本です。
お勧めします。
しゃれたエッセイ集
★★★★☆
私も大学受験の勉強でリンドの文章に接し、日常の何気ない事柄をテーマにしながら、その内容の深さから強い感銘を受けた一人で、当時手に入った対訳書を手に入れてむさぼり読んだ記憶がある。しかし今回あらためて読んでみると、リンドよりもミルンやガードナーにより惹かれたのは年齢的なものなのだろうか?特にミルンの「十七世紀の物語」は、墓標に刻まれたたった4つの記録から想像力を働かせて一つの物語を復元したのはまるで手品のようであった。今やミルンは童話「クマのプーさん」の作者でしか知られていないが、もう一度エッセイストとして再評価されてもいい。
「イギリス」を感じる良質なコラム集
★★★★☆
本書は、第1次世界大戦から第2次世界大戦までの間にイギリスで活躍した4人のコラムニストの文章から、それぞれ何篇かを選んで翻訳したものである。
読んでみると、なんとも言えない、「イギリスらしさ」が漂い出てくる。
自分をも第三者的に突き放すように、だけど冷たくはならず、登場人物すべてに対して温かい視線を注いで、いささか諧謔的に語るさまは、
「これこそイギリス流」と感じさせる。
これは、訳者の力量にもよるところが大きいだろう。
このような本をさりげなく出版しているあたり、岩波文庫おそるべし、である。
英文エッセイ・ライティングのために
★★★★★
イギリス人エッセイストたちの傑作エッセイ集。ミルンやガートナーの優れた人間観察力を垣間見ることができる。
しかし、この本の本来の用途は英文の鍛錬にあるように思える。日本語で読むのも楽しいが、原文と照らし合わせて呼んでみよう。すると、優れた英文の書き手とはどのようなものか、論理的であるだけでなく読むものの心を揺さぶり、思わずうなずかせてしまう文章とはどのようなものかを学ぶことができるはずである。寺田寅彦のような日本文エッセイとは違ったイギリス流の諧謔とは何かを英文ライティングの勉強をしながら知ることができる。
もっと読みたい。何度も読みたい。
★★★★★
二十世紀前半のイギリスで、雑誌などの媒体のために書かれたエッセイの中から最良のものの幾つかが集められたアンソロジー。人間社会。そこは「全ての人に自由が保障されるためには、全ての人の自由が削減されねばならぬ」(本書所収、ガードナー「通行規制について」)といったような数々の逆説に満ち満ちている場所。そこから逃れることのできないわれわれ一人一人は、本書の珠玉の作品群から、「まっとうに」日常生活を送っていく上での多くのヒントを得ることが出来るであろう。ものの見方、考え方、言い方、書き方の参考になるところ大である。