インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

レイテ戦記 (上巻) (中公文庫)

価格: ¥880
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論新社
Amazon.co.jpで確認
力作だが読み方に工夫が必要 ★★★☆☆
 本書は大岡昇平が全精力を注いで書き上げた力作である。自身の出征経験や日本の軍人の当時の日記及び戦後に書かれた回顧録、さらには米側の資料をも読み込んで、レイテ戦の詳細をとことん明らかにしている。戦史好き、特に軍の作戦などに詳しい人にとっては堪らない書物だと思う。また、戦場の描写の合間に見られる戦争についての筆者のコメントはどれも含蓄のある金言ばかりである。

 ただ、本書は読者を楽しませようとすることよりもむしろ、レイテ戦争の真実を明らかにすることを念頭において書かれており、余りに細かい話が多すぎるのもまた事実である。部隊や軍人の名前が無数出てくるし、地図や表も少なすぎるので、本書の進行を理解するのは容易ではない。余程の物好きでないと、上中下全部読み通すのは難しいと思う。幸い、文章自体は大岡昇平らしい明晰な文体になっているので、細かな話はスキムし、随所にある金言を味わいながら読み進める、というのが一般の読者向けの読み方だと思う。
不朽の戦記文学 ★★★★★
元々フィリピンではルソン島において米軍と決戦する予定で、レイテで戦うことにはなっていなかった。なのに「台湾沖海戦」大勝利の誤報を真に受けた大本営が山下奉文司令官や武藤章参謀長の反対を押し切って挙行したのがレイテの戦いである。

このにわか仕立てに決定された作戦の結果、無意味に死んでいった兵士がいると著者は書いた。しかし、たとえその死が無意味であったとしても、夫や息子がどこでどういう風に死んでいったかを遺族は知りたいと思うだろうし、死んでいった兵士も知って欲しいと思うだろう。

著者は自ら事実と判断したものを出来るだけ詳しく書いて75ミリ野砲の砲声と38銃の響きを再現したいという。それが戦って死んだ者の霊を慰める唯一のもので、そしてそれが著者にできる唯一のことだからと。

上巻では主にレイテ島での戦いが始まるまでの経緯と海軍の奮戦、神風特攻隊の登場、そして地上戦で最も激しい戦いとなったリモン峠の戦いを途中まで描く。
克明で分析豊かかつ兵士の目線で ★★★★★
資料を基にした克明な記録に加えて、「もしあの時〜だったら・・・」という分析が興味深く、どきどきしながら読むことができました。
例えば、台湾沖海戦の大勝利が誤りだと陸軍が知っていたら、レイテ島は決戦の場とならなかったろう、もしも連合艦隊がレイテ湾に突入していれば・・・というように。
日米両軍の各師団、大隊、中隊、小隊の動きがここまで詳細に記されると、戦争が局面局面での戦闘の集合体であることがリアルに実感でき、手に汗を握ります。そして律儀に並べられる各戦闘での死者、負傷者数が単なる数字ではなく人間一人ひとりなのだと感じます。
『俘虜記』『野火』と読んできて、大岡氏はてっきり厭戦思想の持ち主かと思っていたのですが、単純にあの戦争を全否定するのではなく、よく戦った兵士達を賞賛しています。例えば神風特攻の若者たちにはこのような言葉を贈っています。
「想像を絶する精神的苦痛と動揺を乗り越えて目標に達した人間が、われわれの中にいたのである。これは当時の指導者の愚劣と腐敗とはなんの関係もないことである。今日では全く消滅してしまった強い意思が、あの荒廃の中から生れる余地があったことが、われわれの希望でなければならない。」
とにかくすごく調べている ★★★★★
 とにかくすごく調べている本。小説、ってなっているが、明らかに戦記ものだと思う。
 「あんまり軍人が出鱈目を書き続け」ているのが執筆の動機らしい。「旧軍人の書いた戦史及び回想は、このように策を加えられたものであることを忘れてはならない」と手厳しく批判し、日米のあらゆる史料を全て調べ上げ、ウソを見抜こうとしている。しかし、あくまでも一兵士としての視点を保ち、死んでいった兵士たちへの鎮魂の想いだけが際だっている。その鎮魂の対象には、米軍の兵士も含まれる。
 個人的に面白かったのはいわゆる「栗田艦隊謎の反転」の見解。一般的には「現在でも謎」になっていると思うのだが、「栗田艦隊の戦意不足、レイテ湾に突入の意志の欠如」と結論づけている。ま、疲れていてやる気がなかった、ということなんだけど、なんか身も蓋もない気がする。
我が座右の書です。 ★★★★★
学生のときに暇にまかせて読み通してから十数年。毎年一度は通読している。日本帝国陸軍の無責任体系といわれる組織構造、作戦立案に見られる日本人の思考方法、非合理な玉砕精神を可とし、合理的な慎重論を怯懦と罵る。下っ端の会社人間としては、「日本人の組織というのはどうして今も昔もこうなのだろう」と軍隊と会社との酷似に暗然とする。「レイテ島の土はその声を聞こうとする者には聞こえる声で、語り続けているのである。」(エピローグ)我々は謙虚に耳を傾けて来ただろうか?あの戦争から何かを学ぶことができたのだろうか?この本は常に我々に問いかけるのだ。