愛と性の狭間で葛藤する男女の物語
★★★★★
恋愛小説の名手と言われている著者の初期作品集。
幻と謳われているくらいなので、どんな恋愛小説なのかと期待して読んでみるとこれまでとは違ったシリアスな内容で驚かされました。
不妊治療とは、代理母とは、産む選択と産まない選択とは...迫真を帯びて描かれた女性の「性」がありありと見えてくるようです。
女の性というものを見つめなおすことができる
★★★★☆
母になる。母性。普段何気なく使う言葉の中にも一旦そっちがわの人となった彼女には、
何よりも一番つらい屈辱的な言葉。なぜだろう、結婚するまでは、「早くお嫁に行け」。
結婚しても「後継ぎはまだか」。結婚して子供を産むのはいったい誰のためなのか、
甚だ疑問に思うことが絶対誰でもあるはず。
そして、その渦の中、はたして結婚できなかったら・・・。子供が産めなかったら・・・。
プレッシャーの中でおそらくたくさんの人が生きている。結婚はがんばればできるかもしれない。
でも、子供はがんばってもどうにもならないこともある。そして、どうにもならないことが
どんなにつらいことなのか・・・。おそらく、「子供はまだか」とは、子供のいる女がいう。
自分は、産んだから。なぜ、あなたにはできないかっていう。簡単よっていう。
この言葉は、心への暴力。”死んじゃえばいいのよ、簡単よ。なんで死なないの。
まだ?いつ?”私には、同じに聞こえる。
小手鞠さんの原点!
★★★★★
絶版になっていた小手鞠るいさんのデビュー小説集。いま小手鞠さんは恋愛小説をたくさん書かれていて恋愛小説家と言われているが、この本では、不妊とか夫婦や親子の愛だとか男女の性だとかより濃厚な人間関係を描いていて小手鞠さんの原点を感じさせられるとともに、もっと幅広いテーマも描けるのではないかと思わせるような作品集だ。表題作の「玉手箱」が逸品。代理出産で得たわが子を主人公が想う切なさがひしひしと伝わってきて、ラストに泣かされる。