アナボルと現在
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解説者はいう、左翼は終わったと。しかしそれは終わりのはじまりである。いまこそ、過去の論争に改めて立ち返る必要がある。本書は大杉栄−山川均の間で論争され未完におわった「アナボル論争」を論点を軸に整理したものである。解説者の論点整理によれば、対立点は「自然発生か目的意識か」「生き方が政治運動か」「感情か理論か」「自己陶冶か外部注入か」、である。世界社会フォーラムについての論文集フィッシャー「もうひとつの世界は可能だ」のなかでの論点も、よくにたところがある。グローバリズムの時代の運動でもこうした論点は妥当するのである。「左翼は終わった」終わったというのは一区切りがついたということである。だから過去をたちかえらない「進歩主義的」左翼は許されない。「左翼は死んだ」は死んだのだからある意味社民、コミュニズム、アナキズムという垣根も低くなったかもしれないのだから、本書で試みられているように、論争は敵対のためにではなく、共同と建設のために立ち返られるべきだろう。