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光の山脈 (ハルキ文庫)

価格: ¥966
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川春樹事務所
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平板な社会派?小説 ★★☆☆☆
 短文構成を主体として、軽快で読みやすい。
 また、山や狩猟、野生動物や銃器等についてよく勉強されている様で、成る程そうなのかと感心させられる点が多い。

 しかし、社会派の小説としては不十分な点が多い。本作品は、樋口氏自身の田舎生活における狩猟マナーや新旧住民の対立をひとつの原動力として書かれた様だが、ほとんどの登場人物はそれぞれ自らの立場を主張するのみで、問題解決に向けた提示や歩み寄りが無く、心情描写という点で平板な構成である。

 田舎暮らしに対する希求が強まっている今、新住民と旧住民といった互いの立場を超えて理解しあえる方法を、稚拙でもかまわないから提示すべきだったのではないか。結局は何をやっても無駄なのかという無力感に苛まされた。
 それぞれの心情を立場という型に当て嵌めて、主人公側だけが神の視座に立つ、非常に底が浅い作品である。

日本にこんな凄い小説家がいたのか! ★★★★★
 樋口氏の作品を読むのは4作目になる。緻密な描写は無駄がなく、なおかつ氏独特の迫力があり、それを読むだけでも1900円を支出する価値はある。しかし、この「光の山脈」はそれだけの本ではない。

 社会派小説とも呼べるだろう。産廃行政の問題、人が人を私的に制裁することの是非、封建的な地方の因習とそれにかみあわないよそ者との確執。南アルプスの山麓に居を構えて自ら日々体験しているであろう、そうした問題提起は執拗で、氏の執念が感じられる。

 しかし、その重さを吹き飛ばす純粋な空気と爽快感が全編を貫いている。悪者を良い者がやっつけるという単純なストーリーと甲府駒ヶ岳のキーンと冷えて澄んだ空気が、ストレートに読者の心臓にたたき込まれる。

 読んだ後に、1人山に登りたくなった。そう、氏の冒険小説はいつもそうなのだ。どこか知らない山に、1人で登りに行きたくなる、すぐれた冒険小説というのは、そうやって男の冒険心を揺さぶるものだ。