コンピCDの金字塔による新シリーズ
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優美な曲線を描く螺旋階段の手摺がモチーフのセピア調ジャケットに包まれ、新しいクラシック・アプレミディのシリーズが始まりました。橋本徹氏のコンパイルするアルバムはいつも、シリーズとして全体のデザインやレタリングが統一され、帯にはキャッチーなコピーが、カバー裏には華麗なエッセイが寄せられて、それらがCDに収録された音のイメージを見事に表現しているのですが、この新シリーズでもそういった仕様は更に徹底され、洗練されています。その手法の完成度はまったく他の追随を許すことがなく、まさにコンピCD界のブランドとして確立していると言えるでしょう。
新シリーズの第一弾は、20世紀最高のピアニストと言われるアルトゥール・ルービンシュタインの演奏集です。クラシックに不慣れな私たちのために、ルービンシュタインの人となりを知るための小冊子が付属しているのも、親切な新趣向でしょう。といっても、あくまでデータ的な情報は最小限に、ピカソの描いた似顔絵(これは恐らく「ルービンシュタイン自伝」の表紙から転載されたもの)やモノクロのスナップ、子息の書いたエッセイと、あくまで感覚的に全体イメージを膨らませるためのものです。
ルービンシュタイン(1887〜1982)は、音楽を愛し音楽に愛されただけでなく、生きること自体を情熱持って味わった天才のようです。太いハバナ葉巻をくわえ、写真に納まった姿はいずれも老齢を迎えていますが、一挙手一投足が様になる人です。
アプレミディのCDは、耳で聴くだけでなく、手にとって嬉しく、見て楽しく、読んでためになり、おいしい食事やお茶のBGMとして、五感で味わえるものだと思います。「プール・ジュルネ」はゆったりした午後の紅茶のひとときに、「プール・ソワレ」はしっとりした一日の終わりにぴったりするように選曲・構成されていますが、どちらも清々しい朝の目覚めや、遅い午前のブランチにも合うでしょう。