物語の歩き方が書いてありました
★★★★☆
物語は創作するものではなく、
動き出すものであるという作家の作り方が参考になりました。
動き出すまで待つ。後ろからついていく。
などが印象に残っています。
物語を語る
★★★★★
自分の「物語」についての
考えを未だばりばりの現役の
作家が語ってくれるということは
割とまれだと思い
その意味でも
小川洋子さんはすごいなぁと改めて思う。
細かい表現は忘れてしまったが
「まず、絵がうかんぶ」
や
「ストーリーはそれほど大事ではない(数ある要素のうちの一つに過ぎない)」
という考えかたが
非常に面白かった。
非常に勉強になったと感じた一冊。
手元においておきたくなる。
自分だけの「驚き」
★★★★☆
自分の心を捉えた驚きを自分だけに授けられた宝物として受け取り、小説を書く。
「頭を空っぽにして、純粋な驚きに打たれて」
最後のほうでレイモンド・カーヴァーを引用して語る部分が特に印象深い。
公演集なので内容がギュウギュウに詰まった感じではないですが。
わたしたちにとって物語がどういうものかがしみじみわかる
★★★★★
小川洋子さんの講演を文章にしたもの。
若い人へ向けてのものもあり、とてもわかりやすく、小川洋子さん自身がどのように物語を紡ぐかとか、それに留まらず、人は誰しも物語を紡ぎ、物語があるからこそいろいろな試練を乗り越えているとか、物語が人にとって、意識する、しないに関わらずとても大切なものなのだということがわかる。ときどき読み返したい1冊。
数学と物語創作の類似性の指摘が新鮮。著者の作品がますます好きになる。
★★★★★
「世にも美しい数学入門」同様、短時間で読める本だが、詰まっている内容はとてつもなく深い。「物語の役割」「物語が生まれる現場」「物語と私」の三部構成。言葉で表せない感動を言葉で表現する物語の役割の本質、著者の創作過程、著者の幼少から思春期にかけての物語体験を研ぎ澄まされた言葉で語るので、小説の本質の核心、著者の小説の生まれる秘密を窺い知ることができ、著者の小説が何故あれほど魅力的かを言葉で確認できる。
既に的確なレビューがあるので、私の心に響いた点だけを記す。まず、数学と物語創作の共通性の指摘に唸る。数学者が既にある秘密を探そうとするのと同じように、作家も現実のなかに既にあるけれども、言葉にされないために気づかれていない物語を見つけ出し、掘り出して、それに言葉を与えるだけだ、という著者の物語に対する態度の何と謙虚なことか。そして数学上の発見がそれまで無関係と思われていた分野のもの同士の間に虹の橋をかけるように、自分は橋をかけるとし、博士の愛した数式の創作プロセスの大きな流れを例としてあげる。この名著の創作秘話が興味深い。
また、創作の現場では、人物より先に場所から物語に入ることが多く、廃墟に降り立ち、そこに隠れている色々な記憶のかけらをつなぎあわせ、死者の声を聴きとろうと耳を澄ませると述べる。だからこそ、静謐な、時に死の匂いが漂い、しばしば記憶を巡る冒険となる著者の作品世界が生まれるのだろう。
自分が世界の一部であると同時に他の誰でもない特別な一人であるという自我形成に物語が助けになったとし、小説の登場人物が「ここにいるからね」と声をかけ、読者と目配せを交わす小説を理想とする著者の矜持が頼もしい。