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凍りついた香り (幻冬舎文庫)

価格: ¥617
カテゴリ: 文庫
ブランド: 幻冬舎
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死者と生者をつなぐ記憶・過去の物語に数学への美の称賛をプラスした作品 ★★★★★
著者らしい、死者と生者をつなぐ記憶の物語。いくつかのキーワードを手がかりに主人公・涼子は彼女の知らない死者の過去を求めてチェコまで旅をする。死者はなぜ栄光の人生のレールから自らおりたのか、最後に謎が氷解するプロットが冴えている。

ひたすら過去に遡るようでありながら、死者の運命は定められていたものと受け止め、主人公が前向きに生きる予感を漂わせるエンディングに光がさす思いがする。

孔雀の番人のようにこの世とあの世の接点に静かに佇む人(?)も登場し、ファンは静かで伝奇的な小川ワールドを満喫できるが、決してマンネリではない。本作では、上記謎ときの仕掛けの他に、香り、スケート、チェコでの彷徨等の要素が読者の感覚を心地よく刺激する。

注目すべきは数学の美に対する称賛。「博士の愛した数式」に至る道程の始まりだ。

あるコンテストで用意するチョコレートの総量を求める、計算式を使わない解法は実にエレガント。これを美しいと思う感覚を共有できるのが著者の作品を読む大きな楽しみだ。
世の中の引き出し ★★★★☆
小川洋子さんの話を読んでいると、話を読んでいたのか、自分の脳内のひだを彷徨っていたのかわからなくなる瞬間があります。
読んでいるイメージが、香りが、脳裏に浮かび上がるというより、
脳内に知らないうちに摺りこまれて、ひたと張り付いていて、もとからそこにあったような感覚に陥る、そんな感じです。

そんな風に、気が付かなかったいろいろな世の中の引き出しが、そっと開いて、
読後世の中の空気や質感が変わっている。
この『凍りついた香り』も、そんな感覚に陥る一冊でした。



胸にじわっとくるのもありよね。ちょっとしんみりしたい、本。 ★★★★☆
小川洋子の世界観が満載。


プラハの唐突感やスケートリンク、隠されていた相手の世界。
こんな現実感のない人とのつながり、あたしならいやだ。


けど、読んでしまう。
あいかわらずの放り投げられるような最後。
救われないエンディング。


だのに最後まで読み終えてしまう。
やっぱり他の本が読みたくなる。
なんだ、この人。
すげぇ。
設定の妙 ★★★★★
恋人の弘之が死んだ。その知らせを受けたとき、私はアイロンがけをしていた。弘之のシャツに。そして病院に駆けつけなければいけないことは分かっていたが、私はそのままアイロンがけを続けた。もうそのシャツに袖を通す人はいなくなってしまったことはわかっていたのにもかかわらず、だ。霊安室で私は弘之の弟と出会った。弘之は家族は皆死んでしまったと云っていた。そこで私は、弘之について何も知らないことに気がついた。何故自ら死を選んだのかさえ。私は弘之の生と死を巡る旅に出る。
数学と、フィギアスケートが得意だったルーキーこと弘之。理系にコンプレックスがある私はその設定だけでたちまち彼に魅了されてしまった。またその、自然な秘密主義、も非常に魅力的だ。
弘之の弟、彰も弘之とは違った魅力を持っている。弘之の死に戸惑う私だが、時々弘之の面影をあらわず彰に、決して履き違えた愛を向けないのも良い。
弘之の足跡を求めプラハをさまよう私の描写に、読んでいるほうもプラハをさまよっている気分になる。



ゆるやかな記憶 ★★★★★
この本の特徴として感じたこと、それはゆるやかな場面転換である。

小説を読んでいると現在と過去、場所の移動などの場面が変化するときに、どうしても現実に引き戻される事が多い。しかし、この本では、場面の転換に境がなく、するりと「記憶」と「現実」を抜けてゆく。

小川さん独特の美しい表現がそうさせるのか、作品自体の持つ魔力なのか、この不思議な魅力を是非一度味わって頂きたい。