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ホテル・アイリス (幻冬舎文庫)

価格: ¥535
カテゴリ: 文庫
ブランド: 幻冬舎
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何故ホテル・アイリスなのか ★★★☆☆
長い間、この本を買うのをためらっていました。
解説の”少女と老人のエロス”というような説明から受ける印象が、私が抱いている小川作品全般に流れる繊細さと相容れなかったからです。

購読後、数頁読んでみて、ああ、間違いなく小川作品だ…とまずは安堵。
読み進めて、島でのエロスな描写が始まって、尚深みを増す、繊細さ。
人が哀しみから抜け出そうとする、凶暴さを、繊細な描写が浮かび上がらせている。

そして何故、タイトルがホテル・アイリスなのか。
作中の一番ストレートにインパクトのあるシーンはホテル外で行われている。
ホテルは主人公の後ろもしくは、中にある。
読み進めながら途中からその微妙な違和感が付きまとっていた。
小川作品のタイトルは、それ自体が読み解きを含む場合が多い。
物語を二重三重に漉したあと残ったエッセンスをタイトルにするのではなく、
漉し紙に残った滲みがタイトルになっているような、漠然とした手触りをいつも感じる。
タイトルがそうであるなら、やはり徹底的にこの話の主人公は少女なのだろう。
哀しみは老人も少女も共通の不可避なものであっても、
残酷さは老人にとってどうすることもできないもの、逃れることができないものだとしても、少女にとってはもうすこし脈動的なものである感じがする。
この作品の中で、少女の残酷さ、それだけが生をもって息づいている。
そんな印象が残りました。

小川作品の系譜で外せない作品だと思いますが、
『密やかな結晶』『やさしい訴え』がいままで読んだ中で一番好きな作品なので
それらと比べて好みという点で星三つでレビューさせていただきます。
強烈過ぎて評価不能:小川洋子の世界 ★★★☆☆
この物語が純愛という言葉で語られるのなら
純愛とはなんとも危険な言葉だ。

ピュアという言葉は響きは美しいが
やはりどこかにひずみがでるものなのかもしれない

社会生活は常にせめぎあいで
けしてピュアではいられないことを改めて認識させられる。

さすが小川洋子。強烈な世界観だ。

しかし、「まぶた」と読み比べると切れ味で劣る。
小川洋子さんも短編でより才能を見せつけることのできる人のような気がする。
少女を弄ぶ究極の変態じじい物語! ★★★★★
読み終わった直後の感想としては、グリム童話のような陰気でジメジメしている雰囲気が後味として強く残った。しかしながら、老人と少女の妖しい関係が深まっていけばいくほど、私はストーリーにのめり込んでしまい、早く次の展開が知りたいという欲求により、3時間ぶっ通しで読み終えてしまった。
特に難解な表現などもなく、登場人物も少ないため、容易にストーリーをイメージしながら読めるのが良かった。
ただ、究極のエロティシズム!などと文庫裏に書かれているが、そこまでエロくない。どちらかというと少女を弄ぶ究極の変態じじい!をジメジメと巧みに描いた作品だ。
一人で読みたい ★★★★☆
著者の小川洋子さんの小説は、いくつか読んで(「博士の愛した数式」とか)、冷静で静謐に描かれる特異な状況やその中における心情のゆらぎ、といったことをくみとっているところが、とても好きで、その流れでこの小説も読みました。
「偶然の祝福」の文庫版後書きで川上弘美氏が、一番好きなのが「ホテルアイリス」と書いていたこともありました。

しかし、通勤の電車の中で読むにはあまりにSM.すぐ閉じました。

といって、いわゆるエロな印象ともちがって、やはり冷静で静謐だからでしょうか、それ以上に感じるものがあります。

特に、主人公の少女は、「M」なのですが、その内面はむしろ残酷。
たまに会う若い恋人がいる人には、つらく感じられるところもあるかもしれないと思いました。
また、主人公の母に対する気持ちも、残酷とえば残酷。
大人になりきらない女の脱皮する瞬間を視た気がしました。
きっちりと娘の髪を結う母 ★★★★☆
母が毎日、きっちりと髪を結い上げる。私はホテルのフロントに座る。母の言うとおりに生きる。
そんな母娘は壊れる時が来る。壊れないと娘は一生、娘のまま。
これは面白いと思った。この世界はわかると思った。小川洋子が書いているというのだけ以外だった。